夏の夜空に

由南りさ

第1話 二人で見た花火

 高校三年生の夏休み……


 夜空いっぱいに広がる花火……


 「朝陽……綺麗な花火だね……」

 嬉しそうな表情で彼の顔を見つめる美緒。


 「ああ、綺麗だな……」

 朝陽も夜空を見上げた。

 彼の横顔を見つめる美緒、

 トクントクンと胸の鼓動が高まる。


 「美緒……来年も花火、一緒に見ような……」

 彼は、はにかみながら彼女に言った。


 夜空に広がる色鮮やかな花火。

 朝陽の瞳に、美緒の瞳に

映る綺麗な花火。


 二人は見つめ合うと優しく唇を重ねた。


 高校三年生の秋、

その日は、秋風が心地良い快晴の日だった。

 美緒は、朝陽との待ち合わせ場所に

一人立っていた。

 「朝陽、遅いな~、寝坊でもしたのかな?」

 待ち合わせ時間を過ぎても来ない朝陽を

心配する美緒。


 スマホを取り出したその時、

目の前をサイレンを鳴らした救急車が

通り過ぎて行った。


 歩道に飛び出した男の子を助けようとした

男子高校生が車に跳ねられたらしい……

美緒の近くを通り過ぎる人がそう話していた。


 この日から、朝陽は二度と美緒の前に

現れることはなかった。

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