8.休憩ついでのトラブル
魔力と身体の測定が終わったことで午前の部の行事はすべて終わったので、俺とアリッサは午後の部である模擬実戦が開始される2時間の休憩時間の間に学園を出て不動産屋に向かった。
貴族なら学園の寮を扱うことが多いが、平民の場合は寮の高い家賃が支払うことが出来ず、大抵は借家か下宿用の集合住宅から学園に通う平民が多い。
無論、金銭面に関しては冒険者協会から換金された貯蓄があるから問題はないが、寮の規則だと従者であるアリッサと離ればなれになるのは心もとがないから借家を借りる予定にした。
「ここからだと、学園から歩いて5分の物件が欲しいところだが…」
「学園に近い物件ですと、月の家賃が金貨5枚とかになりそうですね」
流石に月払い金貨5枚とかの物件は毎週協会の魔獣討伐の依頼を受けないと採算がとれないし、毎週金貨5枚の依頼など早々に入ってくるわけがない。
ここは妥協して、月払い銀貨20枚の学園から歩いて10分の古い一軒家を借りることにした。
「毎度、ここにサインを書いてくれ」
「了解した。ところで、万が一住民が増えても家賃は増えることはないよな?」
「ああ、元は商人が店をやるための借家だったが、途中で経営難を起こして空き家で手放した物件だ。軽く6人ぐらいは暮らせるほど広いが、キッチンは狭いし、トイレも狭いぞ」
「構わない。学園卒業したら出払う予定だから」
「そうかい。ならコレ以上は言わねぇ。あと、家具とかは自力で調達してくれや。ほれ、鍵だ」
不動産屋の店主はそういって借家の鍵と物件の案内の紙をカウンターの上に置いたので、俺達は受け取った後に今月分の家賃である銀貨20枚を支払って後にした。
案内の紙通りに進んでいったら、目標の物件がある通りを見つけたので進もうとしたが…
後から付けてきた柄の悪い学園生徒数人が姿を現した。
「おい。平民落ちのケヴィン。お前、どんな不正をしやがった」
「何のことだ?」
「ふざけるな!さっきの測定結果は何だ!!あんなの不正しなけりゃ出ないだろ!!」
どうやら、先ほどの測定結果が不正しなけりゃ無理とか言ってる時点で話にはならない。
流石に序盤でやりすぎた感は分かってはいるが、加減するのは全力出すよりも難しいものである。
とりあえず…お帰り願うしかないな…
「アリッサ、手を出すなよ。お前が手を出したら、こいつら怪我どころじゃすまないから」
「畏まりました」
「ふざけやがって!!野郎ども!!ケヴィンは袋叩きだ!女はその後に屈しめてやれ!!」
そういって不良生徒達は一斉に殴りかかってきたので、俺はすかさず”吸収”を発動させて、殴ってきた拳の衝撃を一つずつ”吸収”していった。
「どうした?もう終わりか?」
「う、嘘だろ…全力で殴ったのに殴った感触がねぇ…!?」
不良の一人が驚いてるところに俺はゆっくり手をあげて、デコピンの構えを取っていった。
「悪いが殴り返したらお前達の体を木っ端微塵にしてしまうから、優しくデコピンで返してやろう」
そういって俺はデコピンを素振りで済ませる程度に衝撃波を送った。
無論、ただのデコピンの素振りなら何も問題はないはずだが、先ほどの吸収した殴った衝撃分を空気の衝撃波で返したのだ。
そんな衝撃波を受けた不良は脳震盪を起こして倒れて泡を吹き始めた。
「どうする?まだ突っかかるならコレと同じ目に遭うぞ」
痙攣して泡吹いてる不良を見て残った奴らは青ざめながら一人ずつ逃げていき、取り巻きだった二人ぐらいの男達は倒れてる奴を抱えてから逃げていった。
「予定より時間とってしまったな。昼食は模擬試験の後に取るか、アリッサ」
「はい、ケヴィン様。それよりも、あいつら…今度あったら私が…」
「お前がやると流血沙汰になるから勘弁してくれ…あとで収納してある一角兎をごちそうするからそれで手を打ってくれ」
「…仕方ありません。それで手打ちに致しましょう」
渋々と了承してくれたアリッサを後目に、借家に辿り着いた俺は鍵を差してから中に入っていった。
若干風通しはされてなかったのかかなり埃っぽかったが、掃除すれば新古家程度の作りはされており、二階建ての物件にしては上々であった。
「まぁ、問題があるとすれば日当たりぐらいか」
流石に風通し用の窓が北側にあるため、南側が玄関のドアしかないのが物件の安さに拍車が掛かっていたのは言うまでもなかった。
…月銀貨20枚の安さはここにあったわけだ。
「まぁ、窓を突き破って進入するという不審者対策はしやすいがな…家具設置とは後日にして、今日は二人が寝れるように片づけて学園に戻るか」
「畏まりました。あっ、でも…」
「何だ?」
「私としましては、ケヴィン様と同じ部屋で寝ても構いませぬが…」
「…いくら平民落ちになったからといって、貞操概念はちゃんとしてくれ」
平民の場合、別に婚前交渉があっても問題にはされないが…
まだ家族を養う為の安定した収入がないから勘弁して欲しい…
とまぁ、入学するまでの間は兄妹同然に育った主従関係だが、婿入りでの貴族の再入りするにしても二人っきりの家族だから大事にはしたいところだ。
そんな風に考えながら、俺達はテーブルや寝具を収納魔法から出しながら片づけをして、ある程度終えてから学園に戻っていった。
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