6.身体測定

次の測定会場である学園の武術訓練所に着いた。


「ここでは身体能力を測定する!」


俺以上に筋肉の付いた体育系男性教師が大きい声で上げながら、後ろにて蠢いている金色のスライムを叩いてた。


「うげっ…あれ、ゴールデンスライムじゃないか」

「アレに攻撃しろというのか…」


ゴールデンスライム…

確か、拳どころか剣などの物理すら効かないスライムで、魔法抵抗値も高い上位スライムだったはず。

スライム系の魔獣は冒険者協会でも何度か討伐依頼を受けた事があるが、毎度ながらコアを潰さずに倒すのは結構苦労してきたから、アレを完全に倒すのは至難だろうなと改めて思った。


「…美味しそうですわね」

「食うなよ、アリッサ。流石に、あれ食べたら弁償どころじゃない…」


…スライムの体液とコアはジェラートの材料になるとはいえ、アリッサの”悪食”スキルの本能に刺激させるから少しは控えて欲しいところではある。


「…今、なんか美味しそうとかそんな言葉が聞こえたが、聞かなかったことにする。さて、貴様等全員にはこのスライムに全力をぶつけて貰う。拳に自信がある奴は殴っても構わないし、後ろにある木製の武器を使って殴っても構わない。その殴った時の衝撃が測定値が出る魔術をスライムに付与されているので、それが身体測定とする。試しに俺が殴るから見ておれ。…ふん!!」


男性教師が全力でゴールデンスライムをぶん殴り、ゴールデンスライムは反動でポヨンと波打った後は何事もなく元の形に戻った。

そして、ゴールデンスライムの頭上にて半透明の1000の文字が浮かび上がった。


「と、こんな感じだ。なお、今回は魔術師学科志望の生徒もいるが、全員等しく受けることになる。卒業後、特に冒険者になる場合は体力などの身体能力は必須だ!長期間の任務を受ける場合、体力は裏切らない!!例え、この身体測定が悪くても俺がみっちりと鍛えてやる!!恐れずに受けたまえ!!」


と、そんな熱血教師の説明を終えたので、早速身体測定が始まった…


最初は木剣や木のハンマーで叩く奴らが多かったが、大体が100から200前後の数値を叩き出す程度で終わっていた。

中には悪ふざけで拳で殴って測定する奴もいたが、あのゴールデンスライムの堅さに反動で拳を痛めてうずくまった挙げ句、50程度の数値を出して例の教官から怒られたのは言うまでもなかった。


「次!平民ケヴィン!!…お前、獲物はどうした?」

「素手でやります」


素手でやると宣言したとき、周りからクスクスと笑い声が上がっていたが…

俺は気にせず前に出て、拳を作って構えた。


(こいつもさっきの馬鹿と変わらず大した結果出ないだろうな)


とそう思っていた教師を余所に、俺は衝撃”吸収”の状態にして、思いっきりゴールデンスライムを拳で貫いた。


「なっ!?」

「はぁ!?」


貫かれたゴールデンスライムはコアに衝撃が伝わったのか、全身のスライム体を振るわせていたが…超回復のスキルでコアを回復させたのか元の形へと整わせていた。


そして、ゴールデンスライムの頭上には1500の文字が浮かび上がった


「1500!?どうしたらそんな数値を出せるんだ!!」

「スライムを素手でコアを引きずり出す感覚で殴っただけだから、反動さえ吸収すればいけたりする。まぁ、”吸収”スキルの恩恵だからこそ出来る荒技ですかな」


一応、理屈は説明はしたが…苦い顔をされたのは言うまでもなかった。


「つ、次…平民アリッサ!…お前は何を」

「引きちぎります」

「はっ?」

「引きちぎります」


教官がかけ声を上げる前に、アリッサは速攻で前に出て飛びかかり、ゴールデンスライムのスライム体を掴んだと同時に思いっきり一部を引きちぎった。

ゴールデンスライムから悲鳴みたいな振動の音を出していたが、アリッサは引きちぎったスライム体をじっと見つめた後、一口齧ってしまった。


「…思ったより、蜂蜜みたいな甘さが広がりますね」

「…頼むから、ここでは”悪食”を発動させないでくれ」


とアリッサから残りのスライム体を取り上げた後、震えてるゴールデンスライムにくっつけた後に回復魔法をかけておいた。

一方のゴールデンスライムの頭上には規定値を越えた2000という文字が出た後、アリッサに対して攻撃的な警戒色を出していたのでゴールデンスライムから距離を取ることにした。



「な、なんなんだよ…あの二人は」

「あれ、ペントレー家から勘当された奴だろ…」

「使えんゴミスキル持ちだろ…おかしすぎるぞ…」


貴族側の連中からヒソヒソ声が聞こえるが、そんなのを気にせず俺達は先ほどの魔力測定と今の身体測定の結果を教師から試験用紙に記入してもらい、午後の模擬実戦に備えるために休憩に入ることにした。







「おかしいだろ…原作じゃあこんな展開無かったはず…」


さっきと同じように、どこからか声が聞こえたが…気にしないでおく。





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