2.唯一無二の従者

自室の前に到着した僕とアリッサであったが、当人のアリッサは辺りをキョロキョロと見回していた。


「申し訳ありません、ケヴィン様…私の部屋は何処になるのでしょうか?」

「すまない、アリッサ…事前に父上から聞いたのだが、使用人の部屋は空いていないそうなんだ」

「えぇ!?そんなぁ…」


予想外の答えが来たのか、アリッサは肩を落としてうなだれていた。


本当なら部屋の一つは挙げたいところだが、これも使用人達の嫌がらせも含まれている…

恐らくだが、使用人部屋なら開いていないが物置部屋なら空いてるから、そこで暮らせを言ってくるに違いない。


まだ5歳近くの子に外からの隙間風が吹くような物置部屋に住まわせるなんて出来ない。

だけど、そんな嫌がらせにも対処はしてみせる。


「とりあえず、君の処遇については僕が何とかするから、今は僕の部屋に入って頂戴」

「わ、分かりました…」


未だにショックを隠せないアリッサと共に自室に入っていった。



入ってから約1時間ほど…


部屋にベッドが二つの状態のところに、二人係で片方のベッドに仕切り板を並べる形で囲い、カーテンが掛かるか試してみた。

…通りかかったメイド達にも手伝うように”御願い”したが、嫌そうな顔で断ってきたので父上に報告すると追加したら舌打ちしながら手伝ったのは覚えておこう。


とりあえず、即席ながらもアリッサだけの空間は出来た。

いくら子どもとはいえ、異性がいる部屋の中で着替えがしづらい空間だと気が気ではないからね。


「とりあえず、これなら服の着替えとかも大丈夫だとは思う。あとはタンスとかの家具が欲しいときは言って頂戴。お下がり程度の奴はもらえると思うから」

「あ、ありがとうございます…それにしても、先ほどのメイド達は本当に失礼ですね。ケヴィン様にあれほど悪態をつけるなんて」

「この国におけるスキル至上主義が原因だと思うよ…吸収なんてスキル、未だに制御できるスキルなのか分からないし」


この数日間、吸収のスキルの発動条件とか効能を調べていたが、念じるだけで発動するのは分かってはいたが、対象の何を吸収するのかは相手の能力を知った上で念じないとランダムで吸収するという少し勝手が分からない代物であった。

しかも、一回使うと若干クールタイムが生じるため、魔力の少なくて体力馬鹿な相手だった場合、魔力だけ吸って終わったら一方的に殴られるのが目に見えてる。


たぶん、メイド達の中には吸収スキルを使いこなせない奴を見た人物が居て、それを父上達に報告をしているのだろうと思う。


そんな事情を知ったアリッサも「あー…」という声と共に何処か遠い目で返してきた。


「ケヴィン様もなんですね…実は、私もなんです。私の場合は『悪食』というスキルのせいで両親から完全に見放されて、ケヴィン様のペントレー家から使用人打診の件がなかったら修道院に入れられそうになりました…」

「やっぱりか…話が進むと思ったらそういうことだったのか…」

「はい…そう言うことだと思います」


そう言いながら、僕達は自室にあるテーブルにて向かい合って座りながら

溜め息をついた。

このままだと、本当にろくな未来が待っていないんだと。


「…とりあえず、僕は15歳になったら屋敷の一つを貰うことになってるから、それまでは何としてでも稼げる方法ないか探そうと思うんだ」

「たぶん、私も同じようにケヴィン様と同じく放逐されると思いますね…」

「なので、これから二人で暮らすことになる前提で一緒になるが、良いかな?」


まだ子ども同士ながらも、これからどう生きるべきか話すのは早すぎると思う。

が、前世からのボヤケた記憶からしたら、このまま残って何もしなければお互い不幸な未来しか待っていない。


ーどうせ見放されるなら、好きにしますかー


この心情で、好きに生きても良いじゃないか。

と言う気持ちで、僕はアリッサに手を差し伸べた。

すると、彼女もまた呆れながらも困った顔をしながら手を差し伸べてきた。


「良いですよー。私も将来は不安だなぁと思っていましたが、ケヴィン様とはやっていけそうと思います。では、末永くよろしく御願いします」


そう言ってきたアリッサの手を僕はがっちりと握手を交わした…



「とりあえず、今から夕食だが…たぶん、君もここで食べることになると思うからよろしく…」

「あっ、やっぱりそうなるんですね…」


この後、メイドが二人分の食事を持ってきたが…

あからさまに朝の残り物に少し手を加えた料理と堅いパンだけだったが、アリッサの『悪食』の毒無効化によって、食中毒は回避出来た…

食事で足りなかった分は、アリッサと一緒に衝撃音を『吸収』しながら、調理しなくても食べられる物だけ回収して自室に戻った。




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