物語の悪役らしいが自由にします
名無シング
1.物語の悪役として
この国の制度では、5歳になった者は教会にてスキル鑑定を受けるの義務が存在する。
「ケヴィン・ペントレー。スキルの付与の結果は出たぞ」
神官の声と共に自分、ケヴィンは立ち上がり、神官から受け取った鑑定書を手に取って両親に差し出した。
「スキル…『吸収』?なんだこれは?神官殿、これはどういうものですかな?」
「私どもでも、久々の不明瞭なスキルで詳細が存じませぬ。伯爵殿」
父上が神官へのスキル『吸収』の質疑を行った際、自分…僕の頭の中で何かが駆けめぐり、徐々に鮮明になってきた。
(ケヴィン・ペントレー…って何かの物語の悪役でスキル『吸収』を使いまくって自滅した序盤の中ボスだったな…)
タイトルは忘れたが、前世…
たぶん、僕の生まれる前の前世というべきか。
恐らくそうだろう。
その前世の娯楽であった物語に出てくる悪役の一人がケヴィン・ペントレーで、たしか大柄の太った貴族の男で『吸収』を使って乱暴していた小物だったな。
して、物語に出てくる勇者が乱暴狼藉を働くケヴィンに立ち向かい、ケヴィンが何度も勇者の力を『吸収』で何度も吸い続けていたが、勇者の無尽蔵の力には全く意味がなくて、最終的には吸い過ぎたせいで体が膨張して破裂して死ぬ小物らしい最後だったはず。
しかも、これが序盤中の序盤で、すぐに忘れ去られるような存在だったな…
(しかも、その爆発で伯爵邸は木っ端微塵になって一家離散になったはず…むやみに振るうのは良くないな)
そう僕は冷静になって父上の方を見てみたら、神官から教会にある詳細な情報を聞いてがっかりした様子で、何か冷めた目で僕の方を見てきた。
「まぁ、こんなスキルでも長男だしな…成人するまでは大人しくして貰うか。出来れば、次男が良いスキルであるならば良いな…」
と言いながら父上はハァと溜息つきながら、従者達に帰りの支度を用意させた。
そして、父上と従者と共に馬車に乗って自宅へと帰る途中に、父上から口を開いた。
「よいか?くれぐれも我が家名に泥を塗るような生き方をするな。せいぜい、ひっそりと生きてくれ。成人したら屋敷の一つをやるから、そこで住め」
「かしこまりました、父上」
言葉通り、15歳で成人したら離れの屋敷一つやって切り離すつもりだろう。
そう感じた僕は慎みながら受け取り、あとは溜息をつく父上を見ながら家路についた。
儀式の洗礼から数日後…
あからさまに僕への扱いがぞんざいになった。
父上と母上は弟たちにはちゃんと挨拶返すのに僕にだけは手振りで軽くあしらう程度になった。
食事も食卓ではなく自室で食事を取るようになり、従者である執事やメイド達も最低限の振る舞いしかしなくなった。
(流石に度が過ぎるな…)
衣食住は保証はされているが、目を離せばやりたい放題が見えてくるのは必然であった。
流石に専属の従者は一人は欲しい。
そう思った僕はダメ元で父上に談判した。
「父上、流石に自分が不甲斐ないとはいえ、流石にこれではあんまりです。せめて従者の一人はつけてください」
「贅沢は言うな。…と言ったら、流石にメイド達の八つ当たり対照されては我が家も舐められるのは困るからな。一人だけつけてやろう」
父上がそう言って手配してくれてから数日後…
かなりふくよかな同い年の女の子がスーツケースと共にやってきた。
「ほ、本日付けでケヴィン様の専属になりますアリッサ・メラノスです!よ、よろしくお願いします!」
おどおど話す女の子アリッサを見て、僕はもう一度物語の事を思い出そうとした。
確か、アリッサはケヴィンの従者メイドとして働いてる女の子で、ケヴィンの残したご飯すら食べる悪食な太った子で、ケヴィンが倒された後はそのままフェードアウトしたはず…
だが、今目の前にいる子はそこまで太ってはおらず、むしろこの世界においては若干健康的に肉付いてるぐらいには見えてる。
(まぁ、どっちにしてもこれより先にも従者は付けないと思われるから、大事にしないとな)
そう思った僕は5歳ながらの貴族の礼法を則って挨拶した。
「ようこそ、メラノス嬢。不本意ながらも僕のメイドとして今日から働くことになるが、よろしいですか?」
「は、はい!あ、あと私のことはアリッサでよろしいです、えーっと…」
「ケヴィンで良いよ。あと、これから一緒だから堅くならなくて良いよ。アリッサ」
「は、はい!ありがとうございます!ケヴィン様!!」
二人で挨拶交わした僕達はアリッサを僕の自室に案内する形で屋敷に入っていった…
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