33撃目.優しい犯人②

 コース料理の皿の中で、銃口は景平可南子に向けられていた。 


「探偵に聞いたのかい? 可南子」

「なっ……来島さん、なにそれ!?」

「ドゥルガーP08。本物の拳銃だよ……可南子。探偵に何を聞いたのか、教えてくれないか?」


 膝の上のバッグで思わず自分をかばう、可南子。

 来島はそれに銃口を突き付け、ひどく穏やかな口調で尋ねている。

 可南子はうなずいた。

 来島は、困ったように笑った。


「お前だけは、守ってあげたかったな」

「えっ」

「探偵から聞いてしまったなら……あぁ、うん。安心していいよ、可南子」


 引き金に指がかかる。


「僕も、すぐに後を追うさ」


 危険を察知した可南子が、バッグを持って立ち上がる。

 しかし、拳銃の機構は可南子より早い。

 可南子が目を見開く。

 瞬く間に引き金が引かれ、放たれた弾丸は――――




「限定解除目標重要物証ドゥルガーP08解放パイル・バンカァァアァーーーッッ!!!」




 爆風で吹き飛んだ窓ガラスに、遮られた。


「!?」

「シャーロットさん……と、辰弥さん!?」


 探偵と一緒に突っ込んだ俺は、ガラスの破片から可南子をかばうように俊敏に転がった。

 よれよれのスーツの背中がズタズタになった。俺は人工皮膚の張替えを覚悟した。


 まぁ、依頼人の命よりは安い。


 高級レストランの窓の修理費と比べると頭痛がしたが、考えないことにする。

 ともかく。

 俺と探偵は、可南子と来島の間に立った。


「な……ど、どうしてここに……ッ!」


 驚愕の表情の、来島。

 吹き飛んだガラスを受けたその顔は、血に濡れている。

 探偵は白煙をあげる義手をパイルバンカーから元に戻して、無骨な指で、指さした。



「犯人はキミだ。来島 満」

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