24撃目.小動物な依頼人②
依頼は『お化け退治』。
この一見普通の一戸建てには、お化けが出るらしい。
「に、にに、二階の隅の部屋から、毎晩、変な音が聞こえるんです……」
音の正体をたしかめ、対処できれば、依頼は達成だ。
「ああ、あ、あたしは別にどうでも良いかなって言ったんですけど……」
「どうでも良くない」
探偵に依頼することを可南子に提案したのは、来島らしかった。
「可南子は一人暮らしなんです」
真剣な表情である。
「お化けの正体が動物だったりストーカーだったりしたら、可南子にどんな危険が及ぶか」
「お化けだからいーじゃん別にぃ……物理的な危険はないってなんども……」
「お化けでも、危ないお化けかもしれないだろ?」
「でーもー……」
可南子はこの依頼に乗り気ではなさそうだ。
「でもじゃない!」
対して、来島の態度は真剣。両者の間ですれ違いが……じゃれ合いと共に発生している。
俺は心の中で舌打ちした。タバコが吸いたくなった。
「……この世に、お化けなんて存在しませんよ」
俺は水を差すように断言した。
「辰弥くん?」
「人間がそんな非現実的なことを考えるときには、いつだって現実に根拠があります」
「辰弥くん、そういう頭使う台詞は私の担当であってね」
「可南子さん。あなたは何故、お化けがいると思ったのですか?」
俺は探偵を無視し、可南子に尋ねた。
可南子は言葉に詰まった。
成人男性の俺に緊張している……だけではなさそうな、重い表情である。
「可南子、それは僕の方から……」
来島が助け船を出す。
「父ちゃんが、あの部屋で死んだんです」
だが、可南子は自分の言葉で、きっぱりと答えた。
「……お悔やみ申し上げます。ちなみに、それはいつ頃……」
「二か月ほど前に、過労でした。部屋の変な音は、それからずっと聞こえています」
先程までの異常な感じは鳴りを潜め、可南子は冷静に受け答えした。
俺は納得した。なるほど、肉親が死んだ部屋から、正体不明の物音がする……俺と同じ想像に至ったらしい探偵が、尋ねた。
「キミはもしや、お化けの正体が父君だと思っているのかい?」
可南子は寂しそうに微笑んだ。
「……そうだったら嬉しいなぁ、と思っています」
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