ゆうれいのおまわりさん

 夏休みの思い出 作文コンクール


 幽霊のおまわりさん

 栄栄小学校 5年2組 小早川 宏斗(11)


 夏休み、幽霊のおまわりさんに会った話を書きます。


 その日、駅の近くの空き地のそばを通っていると、どこからか猫のなき声がしました。ぼくは猫が好きなので、なでたいと思い、立ち止まってその猫を探しました。

 そうしたら、木の上にかわいい子猫がいるのを見つけました。


 猫はぼくと目が合っても逃げませんでした。猫が乗っている枝の下で、茶色いしっぽがゆらゆらしていました。

 

 ぼくはそれを見て、ははぁ、この猫はここからおりられなくなったのだな、と思いました。


 どうにか助けてあげないと。そう思いましたが、周りには踏み台になりそうなものは何もありません。

 

 ぼくが困っていると、後ろから男の人の声が聞こえました。


「これは、助けてやらなきゃな」と言っていました。


 振り向くと、おまわりさんの服を着た男の人が立っていました。


 その人は僕の横を通って木の下まで行くと、軽々とジャンプして、いちばん太い枝を片手で掴みました。そうして空いた片方の手で子猫をひょいと取りあげて、着地しました。

 そしてぼくにその猫をわたしてくれました。


「困ってる子は助けなきゃな」


 そういうと、その人は笑って、消えました。


 本当に突然消えたので、ぼくはびっくりして、その人が幽霊だったのだとわかりました。


 幽霊を見るのは初めてでしたが、お昼のことだったので、怖くはありませんでした。おまわりさんだし、ヒーローみたいな、かっこいい幽霊でした。

 

 でも、助けた子猫はすぐ死にました。

 

 いえ、はじめから死んでいたようでした。よく考えたら、高い木の上にこんな小さな猫が登れるはずはありません。

 

 ゆれていた、しっぽだと思っていたものはお腹からはみ出したハラワタでした。


 きっとカラスか何かにやられたのだろう、と、家で子猫の死体を見たお父さんは言いました。お母さんはこわがって泣きました。


 でもおかしいのです。確かにぼくは、子猫が鳴くのを聞きました。なのに、そのときには子猫はもう死んでいたようなのです。


 だから、その日ぼくは、おまわりさんと子猫の、ふたつも幽霊を見たのでしょう。

 

 初めて幽霊を見た、夏休みのできごとでした。

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