中学生の噂

「ねえ、聞いてよ、さっき佐々木に服装注意されてさ(笑)」

 

「え(笑)佐々木って、あの佐々木?(笑)」

 

「そう(笑)『そこのぉ、きみぃ、制服のぉスカートの丈がぁ短すぎるぞぉ』って、もごもご言われたんだけど!」

 

「やばすぎじゃん(笑)」

 

「でしょ!(笑) だからさ、言ってやったんだよね。スカートの丈長めにしてたら、佐々木先生みたいな男の人に好かれちゃってストーカーされるから、短くしてるんですーって(笑)」


「(爆笑)」 


◇◇◇  


「佐々木、休職するってさ」

 

「そうなんだ。新しい担任、誰になんだろ」

 

「知らね。でもさ、誰になっても佐々木よりはマシじゃない? 生徒にストーカーするクソ教師よりはさ」

 

「言えてる(笑)」


 ◇◇◇

 

「――ねぇ、佐々木、見つかったって――死んでたってほんと?」

 

「うん。自殺だって聞いたよ」

 

「へぇ。――まぁ、仕方ないか。詰んでるもんね、人生」

 

「ね。てか、最後までクビにはならなかったことにびっくりしたんだけど」

 

「ほんとにね(笑)」

 

 ◇◇◇

 

「佐々木の幽霊出るんだってさ」

 

「マジ?」

 

「うん。放課後になるとね、ストーカーされてた子のいた教室の近くにいるんだって。その子の名前呼びながら、フラフラしてるんだって」

 

「死んだ後もストーカーって、終わりすぎでしょ」


 ◇◇◇

  

「やばい。……見ちゃったかも、佐々木の幽霊」

 

「ええ? ホントに?」

 

「うん。放課後に忘れ物取り行ったら、立ってた。あれぜったい佐々木だった。ヤダ、呪われたらどうしょう」

 

「……まぁ、大丈夫だよ。ストーカーされてた子一筋なんでしょ? 職員室前で『純愛なんです!』って、叫んでたって話じゃん」

 

「……うん。わたし、関係ないよね?」

 

「うん。大丈夫、大丈夫」


◇◇◇ 

  

「……ねぇ、また見ちゃったんだけど、佐々木の幽霊」

 

「またぁ? ……もう、放課後残るのやめなよ」

 

「違う、昼休みに見たの! ……でさ、変なんだけど、佐々木、歯がなかったんだよ」

 

「は?」

 

「こっち見て、笑ったの。大口開けて、にたぁって。……歯がないの。歯茎からダラダラ血が流れてて、一本もないの。自殺って……歯がなくなるような自殺って、あるのかな?」

 

「……疲れてるんだよ。あんま気にするの、やめな」


 ◇◇◇◇


「ねぇ、どうしよう、どうしよう」

 

「……また佐々木の幽霊?」

 

「次はね、目がないの。それでね、身体が、なんだかぶよぶよに膨れて、肌が灰色になってて」

 

「…………」

 

「『さがせない、さがせない』って言いながら、近づいてくるの。だんだん。私のほうに。どうしよう、次、見たら、わたし」

 

「………………」

 

 ◇◇◇


「ああああああ!! もう!! 来るな!! 見るな!!見るなあぁぁ!」


「ちょっと、どうしたの!?」


「にえにえにえにえうるっせぇんだよ! お前のどこが神さまなんだよ! あっち行ってよ! 消えろ! きえろよぉ!!」


「先生! 来て、マナがおかしい!」


「わたしのせいじゃない!! わたしのせいじゃない!! うわああああああ!」


 ◇◇◇


「ねぇ」

 

「見られてる」

 

「ささきの、髪の毛が、私の部屋に散らばって」

 

「気持ち悪い、怖い、なんで、私、関係ないのに」

 

「出てよ、電話、友達でしょ、見捨てないでよ」

 

「怖い、怖い、怖い、こわいよぅ」

 

「…………やだ、来るな」

 

「やだ、やだ、来ないで、触んないでよ、やだ」

 

「あああああああ」

 

「目、目が、わたしの、目」

 

「目が」

 

「めが」

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