22 はぐれコボルトとビッグスラッグ

■22 はぐれコボルトとビッグスラッグ


 それから一週間しゅうかんわたしたちはそともり冒険ぼうけんつづけた。


「スライムだ。――ファイア」


 スライム、ホーンラビットなどを魔法まほうたお練習れんしゅうをする。

 みんなだんだん魔法まほうでの攻撃こうげきにもれていった。


 そんなある探知たんち魔法まほう「エリア・サーチ」を使つかったところ、なにやらあたらしい反応はんのうがあった。


「あれ、スライムでもホーンラビットでもウルフでもない反応はんのうがある、なんだろう」


 てきかず一匹いっぴきだったので、ちかづいてみる。

 魔力まりょくりょうからするとブラッディベアなどの大型おおがた魔物まものではないようだった。

 もうすこちいさい。ゴブリンとかコボルトとかのかんじがする。

 そしてそのてきをついに捕捉ほそくした。


「あっ、いぬがお、コボルトだ」

「あれがコボルトなんだ」

「ほーん」

「にゃうぅ」


 さていぬがおだけど人型ひとがた二本足にほんあしだ。ぼろいふくていてには棍棒こんぼう装備そうびしていた。


「――ファイア」

「――ウォーター」

「――ウィンド」

「――ファイア」


 攻撃こうげきができる攻撃こうげき魔法まほうはなつ。

 わたし獣人じゅうじんのミリアちゃんのファイアがんでいく。

 ミリアちゃんは一発いっぱつつとちからがないのでもうたまれだ。

 サエナちゃんのみず魔法まほう、そしてシリスちゃんのかぜ魔法まほうだった。


 コボルトはさまざまな属性ぞくせい攻撃こうげき順番じゅんばんけてボロボロになってしまった。


「がるるぅ……」


 ちょっとおこっているようだったけどもう元気げんきがない。

 そもそも「はぐれ」だったので迷子まいごなのだろう。

 もともとよわっていた可能性かのうせいたかい。


「えいやぁ」


 わたしけんでとどめをす。

 バタンとコボルトはたおれて戦闘せんとうわった。


「はい、わり」


「なむなむ。コボルトさんやすらかにおねむりください――セドーレ」

「「「んっ、――セドーレ」」」


 みんなでコボルトの冥福めいふくをおいのりする。

 コボルトは人型ひとがたなので基本的きほんてきべたりはしない。

 美味おいしいかどうかはべたひとがほとんどいないのでわからない。

 飢餓きが発生はっせいすればべるかもしれないけど。


 死体したい放置ほうちしておく。どうせウルフなどにべられて最後さいごはスライムが処理しょりしてしまう。


 またちが

 お、またサーチに反応はんのうがあった。


「なんだろう、あまりつよそうじゃないけど」


 ちかづいてみるとそれはビッグスラッグだった。

 ようするに地球ちきゅうでいうだいナメクジだ。体長たいちょう五十ごじゅっセンチくらいのからたないかい仲間なかまだ。

 そのはアワビにていてかなり旨味うまみ美味おいしい。


「やったビッグスラッグ」

「やった、やった」

「これ、美味おいしいんだよね?」

「うん」


 みんなも口々くちぐちにビッグスラッグに遭遇そうぐうしたことをよろこんだ。

 一応いちおう魔石ませきもあり魔物まものなのだけど、たいへん大人おとなしく、ミリアちゃんにつかまってバッグにほうまれる。


「えへへ、ゲット」

ゆうはんたのしみだ」


 ビッグスラッグはむかしはこのへんにもたくさんいてよくれたそうだ。

 そのあじ有名ゆうめいなのだけど、孤児院こじいんではほとんどべられることがない。

 だからみんなたのしみにしていた。


「もっといないかな、ビッグスラッグ」

「うんうん」

「トエちゃんもそうおもうでしょ?」

「うん……」


 わたしべたことがある。たしかにあじ文句もんくなしに美味おいしい。

 でもこいつ、ナメクジなんだよね。地球ちきゅうでもカタツムリはべる。

 でもナメクジはちょっとどうかなぁ、あーんーというお気持きもちなのだ。

 正直しょうじきうとわたしにはすこ気持きもわるい。

 日本にほん音楽おんがく学校がっこうでナメクジをべるとのどにいいといううわさがありべさせるという、なんというかばつゲームみたいな行為こういがあるというはなしく。

 みんなは平気へいきかおしている。ナメクジという先入観せんにゅうかんがないのだろう。

 無邪気むじゃきでいいなぁ。わたしもナメクジをらなければこんな気持きもちにはならなかっただろう。


 ミリアちゃんのバッグのふたまらず、ナメクジのかおがこんにちはしている。

 わたしはそっとバッグから視線しせんらす。

 ぐへぇ。かわいくはない。

 なんかねちょねちょしたえきてて、おおきい触手しょくしゅみたいなのが余計よけい

 あれは高級こうきゅう食材しょくざいアワビの仲間なかま、うんアワビ、アワビ。

 自分じぶんかせるものの、効果こうかはない。


 小川おがわたので、みんなですこっていく。


「おみずだ」

「うん」


 綺麗きれい小川おがわなのでんでも大丈夫だいじょうぶそうだ。

 さかななどもいるがるのはむずかしそうだ。


「カニとかいるかな、カニ」

「いるにはいるけど、ここはりづらいね」

「そっか」


 わたし無理むりだとうとみんな同意どういした。

 まえカニをったさわよりみずおおくて、気持きもみずふかい。

 そのちょっとしたちがいで、みずなかえにくくてそれからそこまでつかないので、カニりは無理むりだという判断はんだんだった。


気持きもちよかったぁ」


 サエナちゃんがみずからがってあしをぶらぶらさせる。

 みんなも十分じゅうぶんたのしんだようでよかった。


 ナメクジはバッグのなかでぐったりしている。

 はやくかえって解体かいたいしよう。うん。きみ食材しょくざいなのだよ。


 こうして孤児院こじいんかえり、ビッグスラッグのがたくさんはいったスープは美味おいしい出汁だした。


美味おいしい、これがビッグスラッグ」

美味おいしいよね、すごい」

「うんうん」

「うまうま」

「おいち」


 こうして今日きょう美味おいしいスープにありつけて、なんとかごすことが出来できました。

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