[総ルビ]異世界転生して貴族だったけど孤児院に捨てられた私は這い上がる ～女の子だって薬草、キノコ、苺とか採取してスローライフしよう～(web版)

21 魔法を使おう

■21　魔法（まほう）を使（つか）おう

　さて午後（ごご）はまだ時間（じかん）がある。

「せっかくだから東門（ひがしもん）にも行（い）ってみましょう」

「「はーい」」

　今度（こんど）は東門（ひがしもん）から出（で）て外（そと）に向（む）かおう。

　ちなみに中央（ちゅうおう）から東側（ひがしがわ）には専門店（せんもんてん）が多（おお）く店（みせ）を構（かま）えている。

　立派（りっぱ）なお店（みせ）の並（なら）びを眺（なが）めながら門（もん）まで歩（ある）く。

　中央通（ちゅうおうどお）りを鳥（とり）馬（うま）のキャラバンが通（とお）っていった。

　数（かず）は16羽（わ）くらいだろうか。

「ラミーニャ、ラミーニャだ」

「……鳥（とり）馬（うま）」

「にゃあ、ラミーニャにゃにゃ」

「ん、みんなラミーニャ見（み）るのは初（はじ）めてかい？」

「「はい」」

「まあ、こういうのもいるね、いつか乗（の）るはめになるかもね、あはは」

　2つの列（れつ）に分（わ）かれていて、それぞれ先頭（せんとう）の鳥（とり）馬（うま）には人（ひと）が乗（の）っていた。

　それから護衛（ごえい）の鳥（とり）馬（うま）の人（ひと）が離（はな）れて2名（めい）いる。

　この鳥（とり）馬（うま）はラミーニャといい、この世界（せかい）では比較的（ひかくてき）多（おお）く飼（か）われている。

　見（み）た目（め）は白（しろ）い体（からだ）に黒（くろ）い翼（つばさ）で、ニワトリを大（おお）きくしてダチョウと掛（か）け合（あ）わせた感（かん）じだろうか。

　鳥（とり）馬（うま）のキャラバンは馬車（ばしゃ）よりずっと速（はや）いので、高速（こうそく）輸送（ゆそう）に適（てき）している。

　各（かく）鳥（とり）馬（うま）の荷物（にもつ）は1人（にん）分（ぶん）くらいしか載（の）せられないけれど、冷凍（れいとう）輸送（ゆそう）が基本（きほん）できないこの世界（せかい）では新鮮（しんせん）なうちに運（はこ）べるのは魅力的（みりょくてき）だ。

　距離（きょり）が長（なが）いなら旅費（りょひ）が浮（う）く分（ぶん）、コストも安（やす）くできるんだろう。

　東門（ひがしもん）に到着（とうちゃく）。

　西門（にしもん）と東門（ひがしもん）はほとんど同（おな）じ大（おお）きさで似（に）ている。

　やはり門番（もんばん）の騎士（きし）と傭兵（ようへい）さんに温（あたた）かい目（め）でニヤニヤされながら通過（つうか）して、町（まち）の外（そと）に出（で）た。

　ほんの少（すこ）し歩（ある）いたところには、立派（りっぱ）な川（かわ）が北（きた）から南（みなみ）に流（なが）れていて、石橋（いしばし）が掛（か）かっている。

「川（かわ）と橋（はし）ですね」

「そうね」

「すごいね、トエちゃん、みんな見（み）てみて、立派（りっぱ）、立派（りっぱ）」

「……橋（はし）」

「にゃあ、そうにゃ橋（はし）だにゃあ。初（はじ）めて見（み）るにゃ」

　元気（げんき）なサエナちゃんが少（すこ）しはしゃいでいる。

　確（たし）かに橋（はし）は立派（りっぱ）だ。

　高（たか）さはそれほどではないけれど、アーチ橋（ばし）が3つ繋（つな）がっている。

　幅（はば）は馬車（ばしゃ）が余裕（よゆう）で2台（だい）は通（とお）れて、すれ違（ちが）えるほどだ。

　中世（ちゅうせい）風（ふう）の世界（せかい）からすれば、十分（じゅうぶん）立派（りっぱ）な建築（けんちく）技術（ぎじゅつ）だ。

　土（つち）魔法（まほう）とかもあるので、そういうので造（つく）るのだろうけれど、城壁（じょうへき）と並（なら）んで巨大（きょだい）ではある。

　私（わたし）はちょっと前世（ぜんせ）の地球（ちきゅう）で見慣（みな）れてしまって、感激（かんげき）が薄（うす）いのかもしれない。

　でも、確（たし）かに大（おお）きいな。

　河原（かわら）に降（お）りて川（かわ）を眺（なが）める。

「さて、では川（かわ）にきたので、魔法（まほう）の練習（れんしゅう）をしよっか」

「「はーい」」

「にゃっ」

　ということで、みんなで並（なら）んで魔法（まほう）を放（はな）つ。

「そういえば、トエちゃんは属性（ぞくせい）判定（はんてい）してないけど、魔法（まほう）使（つか）えるんだっけ？」

「そうだよ、火（ひ）、風（かぜ）、水（みず）はまあ使（つか）えるね」

　私（わたし）も今（いま）まで秘密（ひみつ）にしていた魔法（まほう）をちょっと使（つか）ってみるか。

　火（ひ）は使（つか）う機会（きかい）がありそうだし、風（かぜ）はサーチで使（つか）っている。水（みず）も使（つか）えることにすると便利（べんり）なので。

　土（つち）は土木作業（どぼくさぎょう）とかしなければ困（こま）らないけれど、竈（かま）とかを作（つく）るなら、あると便利（べんり）だ。

「じゃあちょっと待（ま）っててね」

　私（わたし）はそういうと適当（てきとう）に流木（りゅうぼく）を拾（ひろ）ってくる。

　河原（かわら）には増水（ぞうすい）したときに木（き）が流（なが）れてきてそのままになっているのが結構（けっこう）落（お）ちているのだ。

　流木（りゅうぼく）は日（ひ）にちも経（た）っているようで乾燥（かんそう）している。

　石組（いしぐみ）の中（なか）に置（お）いた流木（りゅうぼく）に火（ひ）をつける。

「ファイア」

「わっわ」

「お、おおぉぉ」

　みんな感心（かんしん）して見（み）てくれる。

　私（わたし）はちょっとだけ鼻高々（はなたかだか）だ。

「便利（べんり）だよねぇ」

「うん」

　みんなで火（ひ）を眺（なが）める。

　なんというか炎（ほのお）の揺（ゆ）らめきってずっと見（み）ていても飽（あ）きない。

　その揺（ゆ）れて変化（へんか）する様子（ようす）はなんだかとっても不思議（ふしぎ）で、魔法（まほう）とはまた違（ちが）う観察（かんさつ）し甲斐（かい）があるというか。

　この世界（せかい）には謎（なぞ）がいっぱいあるのだ。

　さて焚火（たきび）の反対（はんたい）側（がわ）に向（む）けて魔法（まほう）をバンバン使（つか）う。

「えいやぁ」

「そーれ」

「ほいほい」

　女（おんな）の子（こ）の高（たか）い掛（か）け声（ごえ）はなんだか気（き）が抜（ぬ）けてしまいそうだけど、これでもみんな真剣（しんけん）だ。ただ声（こえ）がかわいいだけで。

　河川敷（かせんしき）であれば森（もり）と違（ちが）って火（ひ）魔法（まほう）も使（つか）い放題（ほうだい）だ。

　ここなら延焼（えんしょう）とかもしにくいだろう。

　ただ爆発（ばくはつ）魔法（まほう）などの威力（いりょく）が高（たか）すぎる魔法（まほう）は禁止（きんし）しておこう。使（つか）えるのは私（わたし）くらいだろうけど。

　複数（ふくすう）の属性（ぞくせい）がある子（こ）はそれぞれの練習（れんしゅう）をした。

　弱点（じゃくてん）属性（ぞくせい）や耐性（たいせい）属性（ぞくせい）などがあることは知（し）られている。

　相性（あいしょう）が悪（わる）いと攻撃（こうげき）が効（き）かないので、ダメージが大（おお）きい魔法（まほう）を選（えら）ぶとよい。

「見（み）てみて土（つち）人形（にんぎょう）」

「わぁ」

「面白（おもしろ）い」

　私（わたし）が土（つち）を魔法（まほう）でこねて人形（にんぎょう）にした。

　それを河川敷（かせんしき）に走（はし）らせる。

「さぁみんなで土（つち）人形（にんぎょう）を倒（たお）そう」

「わーい」

「そーれ」

「えいやぁ」

　私（わたし）は必死（ひっし）で魔法（まほう）を制御（せいぎょ）して土（つち）人形（にんぎょう）に逃（に）げるよう操作（そうさ）する。

「トエちゃん素早（すばや）い」

「土（つち）人形（にんぎょう）め」

「全然（ぜんぜん）当（あ）たんないよぉ」

　みんな必死（ひっし）に攻撃（こうげき）するが逃（に）げる私（わたし）の土（つち）人形（にんぎょう）も必死（ひっし）だ。

　ジャンプしたりしゃがんだり左右（さゆう）に動（うご）いたりとアクロバティックに移動（いどう）する。

　動（うご）く目標（もくひょう）を正確（せいかく）に攻撃（こうげき）するのはすごく難（むずか）しいのだ。

　なるほど、これは練習（れんしゅう）になる。

　我（われ）ながらよく思（おも）いついたと思（おも）う。

　こうして「魔法（まほう）の鬼（おに）ごっこ」はしばらく続（つづ）いた。

　夕方（ゆうがた）には孤児院（こじいん）に戻（もど）ってきて夕（ゆう）ご飯（はん）を食（た）べる。

「ウサギ肉（にく）が入（はい）ってて美味（おい）しい」

「やっぱりお肉（にく）だよねぇ」

「おいちい」

　ウサギ肉（にく）たっぷりスープは大歓迎（だいかんげい）を受（う）けたのだった。

　さて今日（きょう）はもう寝（ね）よう。

「おやすみなさい、トエちゃん」

「おやすみなさい、サエナちゃん」

　それぞれベッドにもぐって、疲（つか）れを癒（いや）す。