貴方と話したい

 あれからというもの、葵との関係は悪くなる一方だ。最初の方はぎこちなさを感じながらも、会話することが出来た。だか、それが次第に大きくなっていき、つには葵は学校に来なくなってしまった。糸口を探そうにも家には来なくていいとさえ言われてしまっている。


「はぁ〜……」

「侑ちゃん、悩みある?」

「……」

「あるのね」

「そうですね、ない訳では無いです」

「私が相談にのろうか?」

「……」

「心配しないで、私こう見えて相談受けることを多いから」

「いえ、そんな大した事ないですから」

 これが私にできる唯一の強がりだった。

「……そう、顔色も悪いし、今日は早めに上がりなさい」

「分かりました」



「ただいま、おばあちゃん」

「おかえり、侑」

 私はこの家に今年で八十歳になる祖母と二人で暮らしている。

「今ご飯を出すね」

「私も手伝うよ」

「ありがとうね」

 手洗いを済ませてから、おばあちゃんの元へ向かった。



 今日の晩御飯は、生姜焼きだった。葵にも、作ったけな。美味しそうに食べてたなぁ…。あの時作ったのは、おばあちゃんから教わったものでもある。感傷にひたっていると、少し胸がズキンとした。私はその痛みを忘れようと、今食べた物の感想を伝えた。

「おばあちゃんの生姜焼きが世界一だよ!」

「ありがとうねぇ」

「侑、何か困り事かい?」

「……え?」

 おばあちゃんは、全てわかっていると言わんばかりの表情を浮かべていた。郁恵さんにも正直相談したかったが、今までも苦労をかけてきた身として、また心配をかけるのが嫌だったのに、何故かおばあちゃんの言葉には素直になれた。

「実はね、友達…いや親友と喧嘩というか話しずらくなっちゃてて」

 少しずつ今の私と葵の関係をポツリポツリと言っていく。右も左も分からない真っ暗な場所を月が照らしてくれるが如く、おばあちゃんは相槌を打ちながら待ってくれる。

「家族の事を少し言っちゃてそれからなんだ」

「そうかい。それは難しいね」

「うん。私どうしたらいいのかな」

 私はおばあちゃんに縋るように聞いた。

「ふふ、侑それを私に聞いてどうする?」

「え?」

「それは侑が決めることよ」

「……」

 確かにそうかもしれないけど、私だってどうすればいいのか分からない。

 おばあちゃんは、私が言い淀んでいるのを察してか、私に問いてきた。

「侑がその子と一番どうなりたくないの」

「私が一番なりたくないもの……。それは……このまま葵との、関係が終わてしまうこと。私はこれからも葵と居たい」

「分かってるじゃないか」

 そうか私は、関係が悪くなることに怯みを抱いていたが、一番は離れ離れになることが怖かったんだ。

「ありがとう、おばあちゃん。何かわかった気がする。今から行ってくる!」

「そうかい、気をつけて」

 急いで玄関を飛び出した。

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