ドーナツの何が好き?
今日は、久しぶりに街に出てきた。祝日も相まって人が多い。今日葵が用事があると言って今日はお昼大丈夫と言ったので、何となく来た。彷徨っていたはずなのに、足はある方向に進んでいた。葵は今何をしているのだろうかと今居ない人物のことに思いを馳せていた。そうして、ひたすら歩いていると、目的地である、チェーン店のドーナツ屋に着いた。すると、急に誰かに抱きつくかれた。
「!?」
「侑〜」
その正体の声は、聞き覚えがあるというか、昨日も会った人物だ。そうして名前を呼ぶ。
「急に抱きつかないでよ、葵」
「いいじゃん、減るもんでもないし」
「減らないけど、驚きはする」
「当たり前じゃん、驚いたら良いなと思ってたし」
「なるほどね、余計タチ悪いね」
「まぁそれは置いといて今から入るの?」
「そうだよ」
「私も行く!」
「良いけど、用事は?」
「終わった」
と会話をしながら、中に入った。
注文を終え、席に着いた。葵は、長めのデニムパンツをはき、ゆったりとした青の服を羽織っていたためか、それとも彼女の雰囲気なのか分からないがブレンドコーヒーを飲んでいる様子は、とても大人びた印象を与えられていた気がした。
「侑って、エンゼルフレンチ好きなの?」
「どうして?」
「迷わずに、それを最初に取ったから」
「私が好きなのは、こっちのチョコファッション」
「じゃいつも食べてるのか」
「そこまで好きじゃないかな」
「じゃなんでさ?」
と葵は、理解できないと言わんばかりに顔を傾げていた。
「……」
「……」
私たちの静寂は永遠の様にも思えた。葵は根気ずよく私の答えを待っているが、私はそれに続く言葉が喉に詰まったまま、なかなか出てきてくれない。
「ごめん」
そう言って私達は、先事のことを触れないようなしながら接した。
お店を出て帰路に着いていた。普段通りのはずなのに何処か息苦しくてかった。それを察してか葵は、謝ってきた。私は大丈夫と、表面上は伝えたが、全く大丈夫では無い。仮に葵に伝えたとして、私はそれをどうしたいのかも分からなかった。そんな私の気持ちが少しばかりか、こぼれ落ちていた。
「……お、弟が好きだったから」
きっと今の私は酷く困惑した顔を浮かべているのだろう。
「……そうだったんだ」
またも静寂が訪れると思っていた。
「侑が私に家族の話するの初めてだね」
と葵は何気ない様に放った言葉は私の心を酷く揺さぶった。
「……」
「責めてるつもりはなくて」
葵は色々言葉を紡いでは、考えてを繰り返していたが私は、葵に先に帰ると強引に伝え、走って帰った。葵の言葉を聞いているだけの余裕は、その時の私にはなかった。
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