Q2. あなたが仕事をする上で重視することは何ですか?
■ ざっくりのまとめ ■
・【成長】【貢献】の2強、ただし【貢献】はここ2年で下降気味
・以下【専門性】【仲間】【責任】【やりがい】 【達成】【承認】【金銭】【影響】【創造】【仕事以外】は混戦、強いてあげれば冒頭4属性が例年上位にはきているか
・【ビジョン】【競争】は通年で最下位レベル
Q2. あなたが仕事をする上で重視することは何ですか?
(2つまで回答可能)
※2020年以降にできた設問のため、それ以前のデータはありません
昨今の新入社員は
「今の新入社員は成長を何より重んじている」
「成長が望めない、ゆるブラック企業(※1)にいることに不安感を抱いている」
という傾向があるとの論評をニュースなどでみかけました。
しかし――ゆるブラックや不安はさておき、本アンケートにおいて【成長】は【貢献】と合わせて少なくとも5年前から「新入社員が重視している属性」の2トップに挙げられます。
今に始まったわけではなく、ずっと新人は「貢献」と「成長」を重視してきたのです。
今時の若い子――というとついつい個人主義で、組織に馴染もうとしないという色眼鏡で見てしまいがち……。ですが、今の20代は、自身の「成長」と同等に組織人としてちゃんと「貢献」にも重きをおいているようです。
さて3位以下はというと、かなりの混戦模様です。強いてあげれば【専門性】【仲間】【責任】【やりがい】が通年にわたって上位にきているでしょうか?
「Q1.あなたはどのような特徴をもつ職場で働きたいですか?」で、【お互いが助け合う】が1位になっている以上、ここでも【仲間】が1位に来てもよいものですが――あくまで中堅の上位どまり。
仲間との協調は大事ですが、なによりも自己の成長と、周りへの貢献が優先される。と考える人が多いのかもしれません。
また、【専門性】が上位に来ているのは、「Q1.あなたはどのような特徴をもつ職場で働きたいですか?」にて【お互いに個性を尊重する】が3位に入っていたことからも、いかにも――な結果。個の才能を重視する世代ということで納得できますね。
対して、少数派なのは【ビジョン】と【競争】。
Q1と同様、ここでも「周りと競う」ことは優先順位が低いと考える人が多いようです。
■ 本当に20代は【競争】を軽視ているのか? 問題 ■
さて、Q1とQ2の結果より、「最近の若者は競い合うことを避けていてけしからん!」と、溜息、憤りを覚えている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、それは本当に正しい解釈でしょうか?
その答えとなりなそうな設問が、2020年度の新入社員意識調査で行われていました。
「Q.あなたが職場に求めることとして、以下のことはどの程度あてはまりますか?」
ポイントなのはQ2は2つの属性にしか投票できないのに対し、この設問では「あてはまる」「ややあてはまる」「どちらともいえない」「あまりあてはまらない」「あてはまらない」までの5つの選択肢をそれぞれの全て属性に回答できることです。(いわゆるリッカート尺度)
今回の設問で挙げられているのは、以下の9属性。
【皆が1つの目標に向かって一致団結して進めていく】
【互いによきライバルとして競い合う】
【失敗を気にせずチャレンジできる雰囲気がある】
【困っているときは互いに助け合う】
【言いにくいことでも素直にフィードバックし合う】
【アットホームな雰囲気でのびのびできる】
【考えや価値観を押し付けず、互いに個性を尊重する】
【ワークライフバランスを保つことに理解がある】
【過度な干渉がなく、自分のスタイルで自由に動く】
どれも重要な価値観だったせいか、ほとんどの回答者がどの属性にも「あてはまる」「ややあてはまる」に投票しています。
競争を示す【互いによきライバルとして競い合う】についても同様で、「あまりあてはまらない」「あてはまらない」といったネガティブな反応は足して6%にとどまっています。つまり、競争も無意味ではないということは新入社員も認識しているわけです。
ただ、「あてはまる」の票数に入れた割合を見ると、【過度な干渉がなく、自分のスタイルで自由に動く(35%)】に次いで、【互いによきライバルとして競い合う(42%)】がやはり低い。
一方【困っているときは互いに助け合う(89%)】が一番支持を集めており、協調路線を重視する人が多いのは他の設問と一致しています。
要するに
・【競争】は大事ではあるけどもっと重視しているものがある
・優先順位をつけて2つしか選択できないと、【競争】は除外する
と、考える20代が多いのでしょう。
■ 本当に【金銭】は中堅以下どまりが問題 ■
Q2で【金銭】は(11.1%)と、重視をしている人は少な目でした。
でしたが、それは本当でしょうか?
収入・待遇面をなによりも優先に考えている労働者も一定数いる気がします。
そこで、リクルート社の調査から離れて、別の統計も見てみましょう。
東京商工会議所が2024年に行っている、『新入社員意識調査』にQ2と類似する、「就職先の会社を決める際に重視したこと」という設問がありました。
その集計結果ですが、15項目あるうち上位5つに入っているのは順番に、
【処遇面(初任給、賃金、賞与、手当など)】56.0%
【社風、職場の雰囲気】54.3%
【福利厚生】45.4%
【就職先の会社の事業内容】43.5%
【働き方改革、ワーク・ライフバランスI】40.9%
と、上位5つのうち、給与や待遇面にまつわる項目(「処遇面」「福利厚生」「ワーク・ライフバランス」)が3つも入っていました。「社風、職場の雰囲気」という対人関係にまつわる属性も票を集めていますが、あくまで2位。1位は「処遇面(初任給、賃金、賞与、手当など)」です。
設問の仕方や、選択項目がリクルート社のものとは一致しないので完全な比較はできませんが――おそらくは、リクルート社のアンケートに答えた人とは職種の構成割合が違う。
いいかえれば、給与、待遇面については、働く人のパーソナリティによって優先順位が激変する項目なのかもしれません。
(※1) ゆるブラック
最近できた俗称なので決まった定義はないが、残業やパワハラがなく働きやすい職場であるものの、昇給や新しい技術の習得が望めない「働き甲斐のない」職場環境のことを指している模様。
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