『学級大統領』

 ここはアメリカのゴールドバーグ中学校。政財界の大物の子供や、セレブ、要人を対象とした、お金持ち学校である。だが、教諭たちは更なる学業の進歩を目指し、議論を重ねた。


「さて、この学校から更なる偉人を出すには、どうしたら…」

「並みの英才教育では、生温いかもね。社会のトレンドは…」

「何と言っても、今は大統領選だよなぁ…んん?」


『それだ!!』


 ある日、先日の大統領選に倣って、学校を大統領制にすることが決められた。異論はあったが、生徒会では生温いと、さらに強いアメリカファーストを実現させるのが目的に発足された。


 次の日、教室に入った教諭は生徒たちに、こう告げた。


「皆さん。貴方たちには次のトランプになってもらいます」

『いやいやいやいや』

「先生、訳を分かりやすく、レポート400字にまとめて提出して下さい。さっさと授業を始めてください…」

「飲み込みが早いわね、エディ君!!貴方は見込みがあるわ!!」

「は…?はあ…」


 ノリのいいアメリカ人の子供たち。即座に順応し、それぞれ、2人の候補に絞られた。自由党のエディと、教育党のメアリの対決だ。だが、一応他にも候補がいるが。2強の対決だ。


「私はあえて言おう!!弱者には生存権はない!!それが現実である!!だが、このゴールドバーグ中学校の生徒の中に弱者はいない!!我々は一体となって、世界に風穴を開けるのだ!!」


 まず、エディの公約は、自由な発想を育む独自の理論を展開させた。学力ごとにクラスを編成させ、カースト制を実施。健全な精神は健全な肉体に宿るを実現させるという。


「みんな!!エディは口から生まれた、ホラ吹き男よ!!彼に任せれば、学力の貧富の差は広がるばかり!!このままではアメリカに輝く光は無いわ!!私は皆のリーダーの力を目覚めさせる!!」


 メアリは、エディのやり方では学力の格差が生まれると主張。平等で分かりやすい学業の展開を説いた。二人の一騎打ちは苛烈なものになり、3カ月にわたる演説戦が繰り広げられた。


 そして、ついに投票日を迎える。前評判ではエディ有利と見られ、開票作業が進む。だが、投票する生徒たちは、どこかうつむき加減。そして、決着の時。開票率は80%を超えた。


 その結果、わずかな差でエディの勝利が目前。彼は勝利宣言をするが、事態は思わぬ方向へ舵を切っていく。二人の元に黒服で決めた学生たちが、腕をひっつかみ、連れて行った。


 何故なら悪質な選挙違反が発覚。エディは有権者と金銭の授受、メアリは有権者を接待し、あまつさえ未成年なのに酒まで振る舞っていたという。二人は選挙法違反で失格になった。


 それを端に候補者が次々と選挙違反で失格。生徒たちの財政力が仇となった。大失敗に終わった今回の大統領制。教諭陣も頭を抱えている。しかし、たった一人だが候補者が残っていた。


 そして当選したのは、平和党のサマンサ。生徒たちや教諭陣は

彼女には期待していなかった。華も無く、資金力も無い。だが彼女の公約にて、ゴールドバーグ中学校は復活の兆しを見せる。


「ええっと…どうも、平和党のサマンサです。こういう展開になるのは目に見えてました。アメリカファーストなんてとんでもない。私の見ているのは、世界。私の公約はたった一つです」


 そんな彼女の公約は大統領制の廃止。この選挙で、学業は半年の遅れを取っていた。無駄な争いは意味はなく、むしろ害になる。彼女の案は、いかにも簡単な平和への一手だった。

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