03 2つの寂しさ

 荘厳な王宮の門が開き、エマとアポロは馬車に乗り込んだ。窓の外には、見慣れた王宮の庭園が広がっている。しかし、この庭園はどこか異様で、木々や花々がまるで雲の中に浮かんでいるようだった。

 エマは、幼い頃から何度も見てきたこの光景に、今、別れの寂しさを覚えた。アポロは、エマの気持ちを察してか、静かに彼女の胸の上で寄り添っていた。


 馬車はゆっくりと動き出し、庭園を抜け出すと、視界は一変した。雲海が広がり、その奥には、様々な世界が輝いているように見えた。エマは息をのんだ。


「ここから、他の世界へ行くことができるのね」


 アポロは頷き、静かに言った。


「はい。エマ様。長い旅の始まりです」


 馬車は雲海の中を進む。王宮は次第に小さくなり、やがて見えなくなってしまった。


 一方、王宮に残された国王と侍従は、エマの遠ざかる馬車を見送っていた。国王は、複雑な表情で呟く。


「エマよ。無事に帰ってきてくれ」


 侍従は、国王の肩に手を置き、慰めるように言った。


「陛下。エマ様は、必ずや立派な女王になられます。そして、この国をより良い場所へと導いてくれるでしょう」


 二人は、エマの無事と活躍を願いながら、静かに見送っていた。

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