5-3
なぜこんなことになったのかといえば、昨日の葵の発言が事の発端である。お願いを聞く代わりに関西弁を聞かせてもらう。その餌に釣られて気軽に返事をした昨日の自分を天は呪った。そう、今まさに葵と待ち合わせを天はしている。
葵のお願いとは誕生日だったのでプレゼントとしてお出かけがしたいとのことだった。天は男子とのお出かけつまりデート!ネタになる!と食いついたが、よくよく考えるとリアルにデートなどしたことがない。葵としてはただのお出かけなのだろうが、天としては緊張しかなかった。何を喋ればいいのか、変な格好じゃないかなどネガティブなことばかりぐるぐると頭の中を埋め尽くす。
そんなことを考えているから、天はなかなか待ち合わせ場所に行けないでいた。もうすぐ時間なのにとも思うが、勇気が出て来ない。このままドタキャンしてしまおうかとも思うが、それは天には出来ない。なぜなら葵に悲しい顔をさせたくなかったから。
約束は11時で今は10時半過ぎ。そろそろ行かなければと意を決して待ち合わせ場所に向かった。
「あれ?赤音さん」
「わっ!あ……安岐くん……」
背後から声をかけられて天の心臓は大きく跳ね上がる。そして振り向いた先にいたのはもちろん待ち合わせ相手である葵だ。彼は黒のキャップを深くかぶり薄手の黒パーカーを着てジーンズといったラフな格好だったが、それが様になっている。普段の制服や袴姿もかっこよいが私服もイイ。というか、第一印象である顔が可愛いと思えるだけにこの私服とのギャップはえぐい。
天がそんなことを思っているとは知らず葵は天に駆け寄る。
「すみません、待たせちゃいました?」
「ううん!私が早く来すぎただけだから」
天は慌てて首をふる。そして改めて葵をみた。
「私服……いいね」
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