3-3

 連絡先なんて交換したら、何を返していいかわからないと天は必死に遠慮した。しかし、恋愛小説的にはここで連絡先を交換した方が後々の展開的には便利……いやいや、あくまでネタだからリアルに交換はしなくていいのよ。


 天は頭のなかで整理する。その横で葵は電車の揺れを利用して、天の耳元にそっと、囁くように声をかける。


「じゃあ、期待してますね」


「ひぃっ」


 耳元で囁かれた声に天は情けない声を出してしまう。そのせいで車内で変な注目を浴びることになったのだが、葵は特に気にせずにニコニコしていた。そしてそのまま目的の駅につき電車を降りると葵は軽く頭を下げてから手を振って去っていったのだった。


 その後ろ姿を見送りつつ、一緒に登校じゃなくてよかった。心臓が保たないと天は胸をなでおろす。ここでこのドキドキはもしかして……と思えたらよかったのだが、天はやはり天なので、今朝からいいキュンのネタができたと思うばかり。今あったことを全てスマホのメモに起こして、遅刻しかけたのはいうまでもない。

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