第33話 きみが……。③
最初に違和感を感じたのはメッセージの返信がないことだった。
咲太郎はそもそも筆まめでもなかったし、こちらも決まった時間にメッセージを送るわけではなかったから返信に時間がかかることは今までもあった。
けれど、メッセージを送ってその日のうちに返信がなかった事は今まで一度もなかった。最初にメッセージを送った時は文化祭の後だったこともあり、疲れて返信できないのかとも思ったが次の日も返信がないどころか最初のメッセージに既読もつかない。
行ったロケ地は四国の山の中だったから電波も途切れがちで、麓の宿泊施設までいかないとWi-Fiが繋がらない。撮影のスケジュールがタイトであまり時間もなく、電話ができそうな時間は深夜で連絡できそうもない。
何度かメッセージを咲太郎に送るがどれも既読にならず、光は咲太郎の身に何かあったのではないかとまんじりとして月曜の夜に東京に戻った光はすぐに紺野に連絡した。
「もしもし」
『おー、どうした?』
いつもと同じ声の調子の紺野にホッとする。紺野のこの様子だと咲太郎の身に何かあったわけではなさそうだ。
「土曜の夜から咲と連絡が取れないんだけど、咲元気?」
紺野に問い詰めて聞きたいのをぐっとこらえて冷静に尋ねる。
『成宮? ……今日は文化祭の代休だったから会ってないしわからんけど』
そう返ってきて焦りが募る。
「メッセージも既読になんないし、電話をしても出ないんだ。何かあったのかと思って」
そう言う光に紺野は「え?」と困惑した声を返した。
『オレ、今朝明日提出の課題のことであいつにメッセージしたけど、普通に返ってきたぞ』
「え……?」
今度は光が困惑した。
(どういうこと……? 電波が悪くてメッセージ届いてない?)
通知が遅れているのか? しかしロケ先ならともかく、今はWi-Fiの通じる所にいるし電波も正常だ。なんなら仕事で送ったスタッフへのメッセージは問題なく受信してる。
『……喧嘩でもしたん?』
紺野の心配そうな声に「いや、喧嘩なんてしてないけど……」と自信なく返した。
……喧嘩なんてしていない。それどころかお互いに気持が通じ合っていると解ったところだった。
文化祭の日は時間がなかったから、改めて連絡を取って正式に交際を申し込もうと思っていたのだ。メッセージの頻度が増えることはあっても避けられる理由がない。
「明日、学校行くから、その時聞いてみるね」
そう言って有難うと電話を切った。
メッセージアプリを開く。そこには、今朝も送った『既読にならないけど具合でも悪い? 大丈夫?』と書いた自分のメッセージ。
もしかしたら紺野が咲太郎に連絡してくれてメッセージに気がつくかも知れない。
そう思ったけれど、その日も結局メッセージが既読になることはなかった。
【つづく】
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