第27話 きみと一緒に。②
「じゃあ、とりあえず……我がお化け班は総勢十名だから、二人一組で五箇所のお化けスポットを作るのはどうだろう?」
リーダーの男子生徒――
「皆受験生なわけだし、家に仕事を持ち帰るのは嫌だろ? 作業効率を上げるために二人一組チームになって来た客を驚かすネタを考えてくる。最終的に五体のお化けができるわけだけど――実際に当日稼働するのは四体にしようと思うんだ」
え? と皆が首を傾げた。
「せっかく五体作るのに?」
無駄じゃない? と言うメンバーに柳は言った。
「皆だって順番に休憩が欲しいでしょ? 一組ずつ休憩時間をとると、一箇所お化けが出てこない場所ができるけど……客はどこからお化けが出てくるか知らないから問題ないだろ? で、もし二回お化け屋敷に来る奴がいたとしても――」
柳の言葉に咲太郎が「あ!」と閃いた。
「そっか、順に休憩入ってるからお化けの出てくる場所変わるんだ。二回目来た人も楽しい!」
咲太郎の言葉に皆も「なるほど!」と頷く。
柳はにやりと笑った。
「お化け屋敷の中は暗くするから足元も悪いし。一人を介添え役にしとけばスムーズだろ? 万一どちらかが休んだとしても片方がいれば当日なんとかなるし」
自分達が他の出し物に回る時間も確保できて、お化け屋敷のクオリティも保てる。
鮮やかな采配に班の皆がおおー! と手を叩いた。
「と言うわけで、どんなお化けにするかは各チームで考える事! OK?」
柳の言葉に全員が賛同して、その後は各自分かれて話し合う事になった。
ペア決めはあっさりと決まった。
と言うか、そもそも咲太郎と光は初めからセットにされていたから相手に悩むこともなかった。
他のメンバーは話し合いやくじ引きで決めているのに、自分達だけ最初からセットでいいのだろうかと疑問に思ったが、柳に「いーの、いーの成宮は。一ノ瀬の相手出来るの君だけでしょ? 他の人が相手すると角が立つし」と微笑まれてしまい、他のメンバーからも「成宮くんが一ノ瀬くんとペアになってくれないと一ノ瀬くんが納得しないからね?」と何故か生暖かい目で見られた。
――腑に落ちない。
「……あのリーダーの子、めっちゃテキパキしてるね」
采配を振るう柳を眺めながら光が言う。
「……そうだな。まあ、入学式の新入生代表で挨拶したの彼だから」
咲太郎の言葉に光が「へー!」と感心して声をあげた。
「頭の回転速いもんな〜、なんか無駄がないよね」
「うん。頭がいいし、明るくてバイタリティにあふれてるよな」
まさにリーダーって感じ、と笑った咲太郎のセリフの後に、音にはなっていないのに俺とは違って、となんとなく付いた気がして、光は咲太郎をじっと見た。
「……なに?」
「……咲も凄いよ?」
「え?」と咲太郎が首を傾げると、光はじっと咲太郎の瞳を見つめて言った。
「咲はさ、自分のことだけじゃなくていつも周りを見て他の人の事も考えてるよね。咲のその人に公平な所、なかなか出来ないことで凄いことだと思う。弁護士目指してるって言うのも頷けるよ」
咲のそういう所、好きだな。と手放しで褒められて、咲太郎はスマホで編集しなくてもエフェクトってかけれるんだと馬鹿なことを思ったりした。
光の顔面は、心臓に悪い。
「……お前ってさ、仕事じゃなくてもそんなくさいセリフ言えるんだな」
なんとか平常心を装って、可愛くないセリフを返す。
光は「えっ、本心だよぉ!」なんで信じてくれないのー! と騒いだが、「うるさい! ホラ、話し合い始めるぞ!」と耳をふさいで無理矢理話を戻した。
耳が赤く染まっていたのに気づかないでと思いながら。
【つづく】
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