第39話
「いいえ、とんでもない。野々村さんの意外な一面を見られて嬉しかったです。ますます尊敬しちゃいます」
「いや、そう言ってもらえると、よかったな。話して。
だからね、ってわけじゃないですけど、たまには、僕も小さいレディーとは違って、大人のレディーとこうして食事できたらなって勝手に思いましてね、月子さんにお願いした訳です」
「っふふ。小さいレディーにはかないませんけどね。私で良かったら」
「でね、野々村さんとはそのあと何度か食事をして、クミちゃんにも紹介してね。この前の週末は娘さんも一緒に動物園に行ってきたの。かわいかったなー、娘ちゃん」
電話のむこうで月子が目を細めて微笑む姿が手に取るように思い浮かんだ。
でも、でもである。月子が他の男と食事に行くなんて、僕の妻である月子を誘うなんて、相手の男もなかなか大胆だな、これは僕に対する挑戦状ととらえるべきなのか?
などとかなり複雑に物事をとらえているアサト。
「そっか、まぁ、僕がそばにいてあげられないからな、野々村とかいう男には感謝すべき、、、なのかな」
「あ、もしかして、アサト。妬いてる?」
「べ、べつに。妬いてるわけじゃないよ。ただ、僕の月子が他の男と食事とか、いや、いいんだけどさっ。まさか、その男、月子に下心とかないだろうな、月子は案外ぽやーっとしてるから心配だな・・・」
「あは。そんなのあるわけないじゃない。野々村さんは私が結婚してて、すごく幸せだって知ってるんだから。やだなー、アサトったら」
「でもな、男ってのは、だいたいは下心があるんだよ。月子はほんっとわかってないなー。そういう紳士的なヤツにかぎってスキを見せたとたんにムラムラっときて、どうこうしてやろうって思う、、、かもしれないだろ」
「ムラムラって、やだなーもう。ふふっ、わかりました!もし変な空気になったらアサトにならった上段蹴りするから。安心してください。で、年末公演には戻ってこれるんだよね?」
「うん。その日に成田に到着する予定だからさ、充分間に合うよ」
話題をうまく月子に切りかえられてしまったが、これ以上とやかく言って心の狭い男だと思われたくない。
「うん。まってる。気を付けて帰ってきてね」
「オーケー。戻ったらさ、正月は旅行に行こうか、久しぶりに」
「わー!行きたい!久しぶりだね。でも、アサトが家でゆっくりしたかったらそれでもいいんだよ?」
「大丈夫。月子と二人きりならどこでだってゆっくりできるよ」
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