第33話
ユウカが気を鎮めてリビングに戻ると、ナイトがいくつかの野菜を眺めていた。
「・・・あの、先ほどは申し訳ありませんでした」
つとめて冷静に誤ってみる。
「・・・」
(えっ、もしかしてナイトさん、怒ってます?
私が裸みちゃったから)
「ほんとにすいません!
決してわざとじゃなくて、ぐうぜん・・・」
焦って下げた頭をあげると、
「そんなに気にすることないよ。また作ってくれればいいんだからさ。
さっきのドリンク、もう一回作ってくれるかな?
あれ、すごくおいしかったよ。
内緒だけど、いつも飲んでいるのより美味しかったな」
またもや、キラッキラの笑顔。
(・・・もう、地獄だ。
心臓破裂で死んじゃうんじゃないかな、私。
しかも、この人、自分が半裸でいたのとか無意識とか!ううう)
もう無我の境地で行くしかない。
冷静でデキる女に戻らなきゃ。
ナイトの一挙手一投足にいちいちドキドキして凝視してしまうのは、もうやめよう。
なるべく彼を見ないようにするしかない。
この仕事もあとひと月すれば終わる。
それまで持ちこたえなければならない。
「そういえば、またパーティーのお誘いが来ているんですけれど、どうなさいます?
・・・って、うまくお断りしておきましょうか?」
ナイトは、
「うん?ああ、パーティーか・・・いつ?
うーん、スケジュール空いてるなら行こうかな。
ユウカが同伴してくれるんなら」
台本を読みながらサラッと言ってのける。
「ぶっ!行くんですかっ!?」
「ああ。お世話になってる人だからね、結婚30周年とかだったよね?」
「はい。了解しました。お返事しておきますね」
こちらに来てから招待されるパーティーの大部分は、本当にスケージュールの都合で行けないことが多かった。
そんな時は、ナイトは必ず花束を贈っていた。
行けないことへの詫び状をそえて。
(仕事とはいえ、こういう心理状態でナイトとパーティーへ出席するなんて、困ったことになったわ。
でも、お仕事だから、割り切って行かなきゃ)
ユウカは手帳をめくりながら頭を仕事モードに切り替えることに集中していた。
(でも、たぶんナイトと出かける最後のパーティーだから、
せいいっぱいお洒落していこう。ナイトは私なんて眼中ないけど、彼の同伴者として胸をはって行こう・・・)
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