第24話

「月子から聞いていたより、星也は頼もしいよ。

僕はスタッフには厳しいこともあるんだけど、

星也は頑張ってついてきてくれているよな。

とても頼りになる右腕・・・

いや、まだ左腕ぐらいかな。あはは」


「え、俺、左腕ですか?

ま、右腕はユウカさんだし、腕なだけマシかな。

ね、俺、褒められてるんですよね?」


星也が不安そうにアサトとユウカを交互に見ている。


「あはは。心配するな。本当に、星也には感謝しているよ。ありがとな」


ナイトに褒められて、

それ見た事か、と得意げに月子の顔を見返す。

月子は目を細めて苦笑してしまった。


「それよりさ、オマエたちは、昨日の夜どこに泊まったの?」


何気なくアサトが二人にたずねると、


星也とユウカは一瞬動きをとめ、なぜか、言葉を言いあぐねていた。


「あ・・・あの、私の家に泊まってもらったんです。

あ、だからって、別に、何もあるわけないですし。

ね、星也君?」


やましい事がないなら、そう、動揺することないのに。

なぜかユウカはワインをグイッと飲み干した。


(ん?なんだ?)


アサトは何か言いたげだったが、二人はいい大人だ。

それ以上その話題に触れるのはやめておいた。


月子は、


「そうだったんですか。

なんだか、ユウカさんにご迷惑をかけてしまって、

本当にすいません」


と、何も疑うことなく申し訳なさそうに言った。


「あ、でも今日も、私は自分の家に帰りますし、星也さんのホテルは取ってありますから、ご心配なく」


「え?なに気を使っているんだよ。

今日はみんなで一緒に帰ればいいじゃないか、

変だぞ、オマエ達」


「そうよ。私が来たからって、

そんな、ホテルなんかに泊まらなくたって」


アサトと月子はそう言いったが、

ユウカと星也は何となく二人の邪魔になるような気がして、


「いや、義兄さんたち、久しぶりに会ったんだからさ。

二人っきりで過ごしてほしいんだよ。

俺たちも何だか落ち着かないし」


なぜか星也は赤くなって、ワインをガブガブ飲む。


アサトは、黙って聞いていたが、


「わかったわかった。ありがとう。

じゃあ、君たちの好意に甘えるとするよ。

ただし、明日の夕食には戻ってくるんだぞ。

それじゃ、月子、そろそろ帰ろうか」


と、あっさり席を立ち、

レストランに残る二人に意味深な笑みを浮かべながら、星也の肩を叩いて出ていった。


(なっ、義兄さん?何か俺とユウカさんをうたがってるのかな?まさかそんなことあるわけないのに・・・もう)

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