第22話
月子が身支度を終えて階下に降りると、ユウカと星也が到着していた。
二人ともドレスアップしてなかなかお似合いだった。
「あ、月子さん。お久しぶりです。
今日はせっかくのオフに付きあわせてしまって、申し訳ありません。
そのドレス、とっても素敵ですね。
ナイトさんの趣味ですね?」
「ユウカさん。
いつも主人と弟がお世話になっています。
急に渡米してきたのに、スケジュール調整していただいてどうもありがとうございます」
二人は会うのは二度目だったが、なぜか打ち解けた様子で話していた。
月子はユウカを見ながら、
(最初に空港で受けた印象とは、ちょっと違ったな。
少し話すと、クールな中にもユーモアが垣間見える。
素敵な女性だな・・・しかも、改めて見るとやっぱり驚くほど美人だし、ゴージャスっていうか)
月子は黒のイブニングドレス、ユウカは真紅のロングドレスだった。二人並ぶと、まさに対照的な美しさだった。
ユウカは、
(月子さんて、こんなに綺麗な人だったんだ。
華奢に見えたけれど、ドレスをまとうと、
プロポーションが抜群だし、肌も透き通るように白い。
清楚なのにしっとりとした色気があって、女性の私でも思わず見とれてしまうわ。
これじゃあ、ナイトがぞっこんなのもうなずける。
それにしても、パッと見では人はわからないものだわ。
とても控えめで礼儀正しいし、でも凛としたオーラがあるし。
さすが、ナイトの選んだ人・・・)
ユウカも月子に再会して、すぐに納得した。
そして、同時に月子が羨ましかった。
素敵な男性に愛されて、幸せそうな月子。
そんな余裕のようなものが、自分には無いと思った。
(私は、いつも肩肘はって、月子さんに比べたら派手でキツくて可愛気のない女に見えるんだろうな・・・)
すぐにアサトも降りてきた。
ブラックのスーツに白いシャツ、あえてネクタイはしていない。シンプルな格好が彼の魅力を一層引き立てる。
「美しいレディ二人が並んでいると、本当に華やかだな」
月子とユウカは顔を見合わせて姉妹のように微笑んだ。
監督の家に到着すると、すでに数百人の客でにぎわっており、それぞれが自由に歓談していた。
誕生日パーティと聞いて軽い集まりかと思っていた月子は、人の多さに圧倒されてしまった。
(うっ。なにこれ、大々的なパーティなのね。
よかった、アサトの言う通りドレス着てきて)
気おくれしながら、アサトの腕をギュッと掴んで入って行くと、
次々と彼に声をかけてくる人たち。
隣にいる月子にも笑顔であいさつしてくる。
ハリウッドスターやミュージシャン、業界のあらゆる人がいた。
話題は現在撮影中の映画の話や、ほかの誰かの噂話など。
月子はアサトの隣で、笑顔をつくるので精一杯だ。
奥のステージではオーケストラが軽やかに演奏しており、たまに、有名歌手が歌っている。
「・・・すごいね。アサト。人がたくさんで、有名人もたくさん。豪華すぎて驚いちゃう」
「うん。流石に大物監督だよね。
ごめんね、いきなり付きあわせて。
でも、みんなに君を紹介できて嬉しいよ。
いつもワイフはどうした?紹介してくれって、
みんなうるさいからさ。
疲れたら言うんだぞ。監督に挨拶したら適当に消えよう」
ひときわ大きな人の輪の中心に、今日の主役である監督がいた。
還暦はとっくにすぎているだろうか、それでも若々しく恰幅が良く、声が大きい。
監督はナイトを見つけると、輪の中から抜け出てきた。
[ああ、ナイト。君も来てくれたんだね。嬉しいよ。
こちらは、噂の奥さんかな?]
[監督、今日はおめでとうございます。
とても素晴らしいパーティーですね。お招きいただいて光栄です。彼女はワイフの月子です]
そう紹介されて、月子は、
[いつも主人がお世話になって、ありがとうございます。
お目にかかれて光栄です。お誕生日おめでとうございます]
と、ちょっとしたプレゼントを渡しながら何とか答えることができた。
監督はたいそう感激して、握った月子の手を離さない。
月子が笑顔を硬直させていると、
[いや、本当に美しい。月子さんも女優さんですかな?]
[い、いえ。私は、とんでもありません。普通の主婦で・・・]
月子は恐縮して言った。
(それは信じられない!)
大げさなジェスチャーで監督はナイトに何か話をしている。
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