第20話
二人は向かい合いながらストレッチをはじめた。
アサトも月子に負けず劣らず、体が柔らかい。
本当にアサトは何でも完璧だった。
見つめあいながら、アサトが何か思いついたように、
「……あ、そうだ」
月子は彼の手を引っ張りながら、
「ん?」
「この家、買っちゃおうかな」
彼はサラリと言って、今度は月子の手をひっぱった。
「ええー!(まじですか!?)」
月子はびっくりして、今度は声に出してしまった。
「でも、撮影が終わったら日本に帰ちゃうのに?」
「うん。誰かに貸してもいいし、
たまに来たとき用の別荘でもいいかなと思ってさ。
僕はこっちに友達も沢山いるし、今までも年に一回はこっちに来ているしさ」
(ううう……一年に一回用の家……)
もはや、月子の思考の範囲を超えていたので、理解に苦しむ彼女を見ると、
「あははは。月子、難しい顔になっちゃたぞ。
この話はまた今度考えようか」
と、アサトは楽しそうに笑っている。
まるで、いつもの東京の自宅で過ごしているように、二人は久しぶりに色々話し合ったり、笑い合ったりしていた。
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