第7話

滞在先は高級住宅地にある警備つきの一軒家だった。


ホテルでも良かったのだが、一般の客などの往来が多いと何かとめんどうなのと、ナイトの性格を踏まえて、あらかじめユウカが手配してくれていた。


そこは車で住宅地に入る際にも、ゲートで警備員がチェックするという厳重なエリアだった。


「すっげぇー」


星也は興奮して、あたりをキョロキョロ見渡している。


「こちらでは、スターはこれくらい当たり前なんですよ」


ユウカの説明を聞いているうちに、一軒の家のゲートが開き、車は中に入って行った。


今日から数か月、ナイトと星也、ユウカ、そして数人のボディーガード、ハウスメイド、コックなどとの共同生活が始まる。


家というより、屋敷はとても広く、トレーニングルームやプール、音楽室など必要なものはすべてそろっていた。


隣家との境界も木立と高い塀に囲まれ、完全に独立した屋敷だった。



「いかがですか?ナイトさん。お気に召しました?」


ユウカが中を案内しながら僕に聞いてきた。


「なかなかいいね。ありがとう。

そんな時間はないかもしれないけれど、次のアルバムの制作もしなきゃならないし、メンバーが訪ねてきて音合わせとかあるかもしれないから、音楽室は助かりますよ」


僕は、彼女の有能さを認め、百合の香りぐらいは我慢しなければならないと思った。




(やった!ナイトは気に入ってくれたみたい)


ユウカはホッと胸をなでおろした。


スターにとってのプライベート空間はとても重要だったから、

事前にナイトの好みを調べ、この屋敷を手配して良かったと思った。



「ナイトさん、さっそくですが、夕方から映画の製作発表とレセプションパーティーの予定が入っています」


「えっ!?着いていきなり!?」


声を上げたのは星也だったが、ナイトは、


「わかった。それまで少しトレーニングするから、時間になったら教えてください。星也、はじめるぞ」


と涼しい顔でトレーニング室に消えていった。


不安そうな星也の背中を押しながら。

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