第3話

ユウカ。

彼女の見た目と同じ、華やかで強い香りが辺りにまだ残っている。


(花の・・・香りかな?なんか頭がクラクラする)




「行っちゃったね。月子、大丈夫?

これ、今の女性の名刺?すごいね、ブラックカードかと思うわ。こんなのはじめて見た。ふーん」


すぐ後ろで一部始終を見ていたクミが、

月子の手から真っ黒なプラスチック製の名刺をすっと抜くと、しげしげと見ながら声をかけた。


クミは月子と幼馴染で大親友である。


バイクを乗るきっかけを作ってくれたのもクミだった。

今日も月子の突然の誘いにも快く付きあってくれた。


「あっ、う、うん。ありがとう、大丈夫。

アサト、行っちゃったね。

無事に着いたら連絡くれるって。


それより、朝早くから付き合わせちゃって、

本当にごめんね。ありがとうクミちゃん」


月子はあえて、ユウカの事にはふれずにいた。


クミは笑顔をみせて、


「そんなこと朝飯前だわよ。

月子がバイクで追いかけたいって気持ち、よく分かるしさ。

朝のドライブ気持ち良かったしね。


月子の運転もかなり上達してたから安心したよ。

なんかさ、お腹すかない?

海ほたるにでも寄り道して、ゆっくり戻ろうか?」


月子も気を取りなおして、


「そういえばそうだね、私も急にお腹空いてきちゃった。

では師匠、帰りもよろしくお願いしまーす!」


と笑ってみせた。

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