第45話

近づいてみると、予想以上に大きな門だった。


月子は、歩いて来た道を振り返って見た。


南国の木々が互いにからまり、自然なアーチになっている。


(おとといの夜出会った人と、今沖縄にいる…)


なんだか、何もかもが夢のようで信じられなかった。


門の近代的なセキュリティーキーの暗証番号を押すと、ガチャリと重い音がして開いた。


「ここからは、はだし」


突然、彼がそう言いながら靴を脱ぎだす。


(え?)

と思いながらも、月子も同じように靴を脱いだ。


門の内側は、よく手入れされた芝生が広がっており、白い珊瑚か何かをしきつめた小道がカーブしながらつづいている。


「はだし、気持ちいい」


彼が靴を脱がせたのが納得できた。珊瑚の小道や芝生がひんやりとして心地よい。


「だろ?」

彼は得意気に笑った。


カーブを曲がると、真っ白な家があらわれた。

家と言うよりは、館といったほうが相応しいかもしれない。

オレンジの琉球瓦の屋根に、白い漆喰のウロコ壁、琉球風とも南仏風とも言えるような洒落た建物で、玄関ポーチのまわりには、深紅のブーゲンビリアの花が咲き誇っている。


「きれ・・・い」


月子がそれ以上言葉を失っていると、彼は手を引き、


「こっちはもっとすごいぞ」


と、館の裏手に連れて行った。


白いレンガが敷き詰められた広いポーチがあり、南国風のガーデンチェアやソファが置かれ、プールやジャグジーがあった。その先には琉球風の東屋まである。そして、低い石と緑の生け垣の向こうには、白い砂浜と碧い海が広がっていた。


「アサト・・・ここは」


月子は今にも走り出したい気分だった。


(まるで映画みたい・・・こんなところが、実際にあるなんて・・・)


僕は月子の肩を抱きながら、


「気に入ってくれたかな?ここが僕の本当の家だよ。どうしてもこの景色を君に見せたくて、強引に連れてきてしまった」


家族や友人を連れてくることはごくたまにあったが、基本的に、ここは僕の完全なプライベート空間だった。今まで、女性を連れてきたこともない。


「・・・ありがとう。とっても素敵。私、この景色、一生忘れない。この二日間で一生忘れない景色がたくさん・・・」


月子は言葉につまり、胸が一杯になった。


そんな月子を僕は強く抱きしめた。

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