第41話
VIPルームの乗客は、一般の客が乗り込んでから最後に乗るらしかった。搭乗ゲートにはすでに乗客の姿はなく、二人は最後に乗り込んだ。
案内されたのは、国内線の特別席。一般の席からはカーテンで仕切られており、二人の他に乗客はいなかった。
(まさか、特別席を全席貸切にしたの?!…なんで彼はここまでするのかしら?)
月子は本当に不思議に思った。
やがて機内アナウンスが流れ、彼女は目的地が沖縄であることを初めて知った。
「えっ!沖縄に行くの!?」
驚きながら彼を見ると、楽しそうに笑いながら悪戯っ子のようにウインクをした。
彼の行動は月子の想像を遙かに超えていた。次は月へ行くと言っても驚かないかもしれない。
月子は着席すると普通の眼鏡に変えた。
チラリと、アサトを見る。
はじめて、まともに見た彼の横顔は、想像していた以上に美しかった。
(アサトさんは絶対に有名なモデルさんに違いない。だから人目を避ける必要があるんだわ)
と思った。
しかし、月子は普段、雑誌はおろかテレビも見ないため、確信はなかった。
機内の担当アテンダントは何やらソワソワしながら、やたらと世話をやいてくれる。
彼がドリンクのカップを渡しながら「ありがとう」と言っただけで、後ろの方で色めきだった声が聞こえてきた。
(やっぱり…彼は相当有名なのかもしれない。私は、ぜんぜん疎くて、彼はずいぶん拍子抜けしたんだろうな)
仮に彼が有名人でなくても、彼と一緒にいたいと思う女性は沢山いるはずだ。そのぐらい彼は格好良かった。
当然のことながら、本当は彼女とか奥さんとかもいるのかもしれない。だとしたら、私は愛人?
月子は自分の想像に焦ったが、本当のところはわからないし、彼がそんなことをする人には到底思えなかった。
いずれにしても月子の知らない世界のことなので、それ以上考えるのをやめにした。
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