第40話

月子は彼の肩にもたれていた。まだ気だるさが残っていた。よく見ると、彼も白いシャツにジーンズだった。


(ペアルックみたい)

と思いながら、彼女は微笑んだ。


「アサトさん、いったいどこに行くんですか?」


「ひみつ。と言ってもすぐにわかるよ。ほらもうすぐ着くから」

彼がイタズラっぽく答えた。


窓の外にぼんやりとターミナルのような場所が見えた。


「もしかして、空港?!」


月子は彼の顔を見た。

ぼんやりとした中で彼の笑った白い歯だけが見えた。



空港には、特別な人が出入りする駐車場とラウンジがあるらしく、車から降りると無線を持った案内の人に先導された。ラウンジは個室になっていて、仮眠用のベッドまである。


月子がキョロキョロしていると、サラリーマン風の男性が入ってきた。


「あぁ、ありがとう。急に呼び出してすまなかったね」

アサトとは顔見知りのようだった。


男性はおもむろにアタッシュケースをひらくと、中にはずらりと眼鏡、サングラスが並んでいた。


彼は、

「月子、どれがいい?好きなの選んでみて」


そう言いながらも、勝手に何本か選び出している。


(私の為に、眼鏡屋さんを呼んでくれたの?)


彼の気配りに感激していると、


「これかけてみて、これは駄目だな、こっちはいいな」

と、手早く決めてゆく。

サングラスと眼鏡か決まると、男性は大きなジェラルミンの箱を開け、今度は視力検査用の機械だった。素早く視力を測ると、足早に部屋から出ていった。


搭乗が始まる頃には、仕上がった物を置いていった。


(…何から何まで素早すぎる!)


月子が感心していると、彼がサングラスを手渡し、


「悪いけど、機内までははこっちね」

と彼女に言った。


出来上がったサングラスをかけてみると、途端に視界が鮮明になった。偏光レンズらしく、外も室内もクリアで度もピッタリだった。


「ありがとう、アサトさん」

喜んで彼の顔を見ると。サングラスをかけてはいるものの、はっきりと彼の顔が見えた。

月子は嬉しくなって、笑顔になった。


彼も、

「良く似合うよ」

と嬉しそうに笑っていた。

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