第35話

シャワー室は朝の日差しで明るかった。

全面ガラス張りで景色が見えるようになっている。

もちろん特殊なガラスのため、外からは見えない。

と言っても、ここは東京でも地上から最も高いペントハウスだ、誰からも見えるはずはないが。


僕はシャワー室で月子のローブを脱がせ、自分も脱いだ。


(えっ、アサトさんも一緒に?男の人とお風呂に入ったことない)


月子は焦った。こんな明るい光の中で、お風呂になんて入れないと思った。彼はやはり、こういうのには慣れているんだろうか。恥ずかしいとかはないのだろうか。


彼はそんな月子の動揺を察してか、窓の遮光スクリーンを半分下げ、


「ここに座って、危ないから」


月子は観念して、されるままに大人しくしていた。


僕は改めて彼女を見て驚いた。

きのうの夜も綺麗だと思ったが、昼間の光の中ではさらに美しく輝いていた。シミひとつない真っ白でなめらかな肌。

女性らしいが鍛えられた肉体。


(本人は自分の美しさに気づいているんだろうか?それとも、バレリーナはみんなこんなに綺麗なのか?)


所々に、自分が残したキスマークが残っていて痛々しい。


(痕にならなければいいが、悪いことをしてしまった)


その跡を見ていると、僕はまた彼女が欲しくなってきた。


(これじゃ、とんだ変態だと思われかねないな)


欲望を抑えながら、彼女の髪を洗い、手をひいてバラの花ビラを浮かべた湯船に一緒に浸かった。

昨夜食事をしている時に好きな花はバラだと言っていたから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る