第34話
僕は赤面しながら至近距離で自分を見つめている彼女に思い切って聞いた。
「僕の顔、見える?」
月子はアサトの顔にそっと触れて目を閉じた。
「髪は…少し濡れている。額から眉にかけては…彫りが深い」
僕は彼女が何をし出すのかと思ったが、されるがままにしていた。
(面白い子だなぁ)
「目は一重かな、二重かな、不明。睫毛が長い、鼻も高い。顎はシャープだけどがっちりしている…唇は……フフッ…笑ってる」
月子は自分でも笑ってしまった。
アサトの顔を触っていて内心驚いていた、まるで彫刻のような顔立ちだったから。
「ごめんなさい、昨日の夜コンタクトがハズれてしまったみたいで、私、超ド近眼なので、30㎝ぐらいでやっとおぼろげで、今アサトさんの顔…ほとんど見えないの」
僕は月子のリアクションに納得した。と同時に拍子抜けし、苦笑してしまった。
「コンタクトって、このミイラみたいなのかなぁ?ははは」
彼は小さく固く縮んだコンタクトをつまんで笑っていた。
「私もシャワー入ろうかな。申し訳ないんですが、連れて行ってもらってもいいですか…ごめんなさい」
「ごめん、笑い事じゃないよね。お安い御用だよ」
アサトはローブを月子に羽織らせると、手を取り、静かに立たせた。
一瞬、彼女はよろめいたが受け止めた。
「まだ、寝ていたほうがいいんじゃないかな」
「ありがとう」
彼女は腕の中でニコリと笑いながら僕を見上げた。
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