朝の光の中
第33話
カーテンの隙間から朝の日差しがわずかに差し込んでいる。
(どのくらい眠っただろう…眠っていないのかも…)
月子は隣にいるはずの彼を手で探した。
大きすぎるベッドには、どこにも彼の姿はない。
朝が苦手ですぐに起き上がれない彼女はベッドの中でしばらくまどろんでいた。
その姿を離れた椅子から見ていた僕は、考えていた。
(さて、どうしようか…)
意を決したように彼女に近づくと、
「おはよう」
と言いながらベッドに腰掛け、彼女の頬にキスをした。
「キャッ」
月子は少しびっくりしたが、彼がそこにいてホッとした。
「おはようございます。もしかしたら…もういないのかと思いました」
バスローブ姿の彼は月子の横に寝転ぶと、片肘をたて、まだ覚醒しきれていない彼女に優しく聞いた。
「どうして、僕がいないと思ったの?」
「なんとなく…仕事か何かで…もう行っちゃったのかなと思って」
僕は彼女をシーツごと抱き寄せると、
「僕はそんなことはしないよ。でもずいぶん前に目覚めて、君の寝顔を見ていた。きのうは素敵だったよ。沢山泣かせてごめん」
月子はきのうの夜を思い出して急に恥ずかしくなった。途中からは断片的にしか記憶がない。でも、自分でも驚くほど大胆だったような気がする。
「ごめんなさい。私、あんなに…」
「恥ずかしがらないで。僕はとても感動したんだよ」
月子は返す言葉が見つからなかった。今は何を言われても恥ずかしさしかない。
出会ったばかりの男性とその日のうちに関係を持ってしまった。
「ア、アサトさん、全然寝てないんじゃ…ないですか?その割には元気そうですけど」
「ああ、3時間ぐらいは寝たかな。もう爆睡。起きて適当に筋トレして、シャワーも入ったしね。今はすごく気分が良いよ」
「まるで宇宙人ですね」
僕は彼女の頭を撫でながら真面目に聞いた、
「本当に、無茶してごめん…体はどう?つらくない?起きられなかったら無理しないで」
体は…大丈夫な感じだった。それよりも、言い知れない心の動揺があった。
(私ったら、何を動揺してるんだろう。自分から望んだことなのに)
「…ありがとう。大丈夫です。朝弱いのはいつものことなんです。目覚めても30分近くはダラダラしてしまうの」
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