第31話

僕の背中に回した腕から、指から彼女の気持ちが伝わってくる。

時折、力を込め、僕の首筋に顔をうずめて自分の口から漏れる吐息を塞いでいる。

その姿は儚く切なげで、まるで少女のようだった。


僕は一瞬、

このまま彼女を解放してあげたい気持ちになった。


(本当に、彼女を抱いてしまっていいのだろうか…)


しかし、気持ちとは裏腹に体はもう歯止めがきかなかった。


彼女の身体がピンク色に染まり始め、さらに美しく僕を誘ってくる。


「感じてるなら、我慢しないで、聞かせて」


そう言いながら、彼女の細い手首を片手で束ね、彼女の頭上で抑えた。


「…アサ…ト…」


彼女が狂おしそうに僕の名前を小さく呼ぶ。


助けを求める彼女の瞳。


「…もぅ…だ…め…」


絶えきれなくなり、逃げ場を探している彼女。


「もう少し、我慢して」


僕は時を待っていた。



月子は自分に何が起こったのかわからなかった。


(からだが・・・へん)


頭の中が真っ白になり、彼にしがみついていた手の力が抜け、彼女は知らずに泣いていた。

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