第30話
ベッドルームも暗く、足元と枕元にキャンドルが灯してあるだけだった。
「…わたし…」
突然言いようのない不安におそわれて、月子が何か言いかけたが、
「シー。僕を信じて。不安だったら僕にしがみついていればいい」
彼は口づけをしながら、月子の髪をといた。ベッドにふわりと広がった髪を見て、
「とても…綺麗だ」
と言った。
顔や首筋にキスをされながら、気がつくと彼女は下着だけになっていた。
恥ずかしかったが、暗闇で自分はほとんど見えなかった。もう彼に身をゆだねるしかない。
彼もシャツを脱いだ。
キャンドルの灯りに浮かび上がった彼の身体は驚くほど白く、服の上からは想像できないほど、筋肉が無駄なくついている。女性の自分が気後れするほど、彼は美しかった。
ゆっくりと振り向いた彼は、月子が思わず見とれていたことには気づいていない。
再び彼女に覆い被さり、優しくキスを繰り返す。彼の唇が熱い。
月子は気が遠くなりそうだった。
二人はとうとう一紙まとわぬ姿になった。
月子は自分を見下ろしている彼の視線を感じ、恥ずかしさのあまり身をよじると、
彼はやさしく肩を戻しながら、
「恥ずかしがらないで。ちゃんと見せて。僕が触れると汚してしまいそうなほど、君は本当に綺麗だ」
もう、月子は彼に見つめられるのが限界だった。
「…おねがい。…もう…そんなに見ない…で」
泣き出しそうな彼女に、アサトはそっとふれてゆく。
小さなアゴから白くて長い喉、くっきりと綺麗に並んだ鎖骨、細い身体からは想像できなかったが、ふっくらと張りのある胸は大きく波打っている。
肋骨のあたりはさらに細い。何より驚いたのは綺麗に割れた腹筋だった。
男の腹筋とは違い、柔らかな筋肉の造形美だった。
細いウエスト、引き締まってはいるが女性らしい曲線を描いた腰、真っ直ぐに伸びた形の良い足。
正直、彼は今まで数え切れない女性と夜を共にしてきた。一流モデルもいれば、有名女優やダンサー、銀座や赤坂で一番という夜の女たち…。
月子は、その誰とも違っていた。
一見どこにでもいそうな普通の女性。それなのに、ここまで鍛えられた女性らしい身体は見たことがなかった。
両手で頭から足の先まで愛おしむ。ゆっくりと。
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