第27話

レストランの個室に案内されるあいだ、僕は少し前を歩く彼女の美しさに驚いていた。


髪をふわりと無造作にアップさせ、白い首筋から、なだらかな肩、腕へとほっそりとしたラインがつづいている。


背中の大きく開いたドレスからは、無駄な肉のついていない肩甲骨が小さな羽のように真っ直ぐに伸びている。


両手を回したら余ってしまいそうな細いウエスト。膝丈の上品なブラックドレスからすらりと伸びた足。


決して肉感的でも豊満とも言えないのに、すばらしく均整のとれた美しさだった。


(こんなに綺麗な子だったなんて、これじゃあ食事に集中できそうもないな)


下心が全く無い訳でもなかったが、嫌らしい意味ではなく、彼は人の肉体に興味があった。

だから、自分でもトレーニングは欠かさない。


そうかといって、相手の女性に対して容姿や肉体の完璧さを求めたことはなかった。


だいたい彼といる女性達は、既に、自分に魅力があることを知っており、彼に選ばれた女であることを自覚していた。そして、女を武器につねに勝ってきた女性達だった。


月子は後ろを歩くアサトの視線を痛いほど感じていた。


(あぁ、こんな大胆なワンピ着て来るんじゃなかった)

後悔してももう遅かった。


(彼はどう思っているんだろう、デートをすぐに承諾して、車に乗りる軽い女だと思ったかしら・・・)


恥ずかしくて耳の後ろまで赤面してゆくのがわかる。

いっそのこと、この長い廊下を走り出してしまいたかったが、自分が彼に会いたくて選んで来たのだから、今日を楽しもうと自分に言い聞かせた。

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