第21話
「モグモグ…で、食事の約束は…モグモグ…いつなの?…ハグハグ」
「…こんや」
クミの動きが止まり、口いっぱいのパンをゴクリと飲み込むと、少しむせながら、
「今夜ぁ?!」
月子はドリンクを渡しながらコクリとうなづいた。
「…やっぱ、断ろうかな、なんか良く考えると怖いかも。それにさ、馬鹿っぽくない?」
「なーに言ってんの!小娘じゃあるまいし。もったいない!男と食事なんてあんた何年ぶりよぉ!楽しんできなさいよっ、行かないんだったら…あ、あたしが行くっ!」
(…クミちゃん、訳のわからない事言ってるし)
それから、一時間。
あーでもない、こーでもないと言いながら、月子のファッションショーが続き、
「まあ、相手の好みも、何もわかんないからね、どんな店行くかも不明だしさ、最初はこんなもんでいいでしょ」
とクミは自信満々に服を見立ててくれた。
実際、クミのセンスは抜群で、月子の魅力を生かした少し大人のコーディネートが完成した。
「ありがとう、クミちゃん、私、これで、少し勇気出たよ」
月子は本当は、自分が彼に物凄く会いたいということはクミには言わなかった。
キスをしたことも。。。
「あ、念のため、勝負下着持って行きなよね」
クミがサラリと付け加え、ウインクした。
月子はギョッとしながら、彼女を上目遣いに見て、あえて何も答えずにいた。
(まさか、そんなこと、あるわけ・・・ないよ・・・たぶん。ただの食事だもの)
と思いながら。
「ところでさ、待ち合わせって、O駅のエドモンズだったっけ?」
クミが何気なく聞いた。
「そうだけど?」
月子はクミをチラリと見た。
「いや、ただ聞いただけ、あの店、おしゃれでいい感じのカフェだよね。じゃあね~。楽しんできなさいよっ。ウフフっ」
クミは月子に意味深なウインクすると、ポンと肩を叩き、楽しそうに出て行った。
(はぁ・・・)
何だかドッと疲れが出た。
デートに行く前からこれでは、先が思いやられる。パワフルなクミにはいつも助けられてばかりだ。
彼氏の宗一さんは、クミとは対照的で、とても物静かな人なだけに、男と女はわからないものだなぁと、月子はぼんやり考えていた。
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