第20話

クミは、電話を切るが早いが、月子の家にすっ飛んで来た。

二人は小学校からの幼なじみだ。


息を切らしながら月子に駆け寄り、矢継ぎ早に質問責めにする。


「月子ぉ!な、なんて言った?!お、男と食事~?彼氏できたの?どこの誰よぉ?ハァハァ…お水ちょうだいっ」


その様子を見て月子は吹き出してしまった。


(クミちゃん…面白すぎるよっ、サンダル片方違うし、口の端にケチャップついてる…)


とにかく、クミは見かけも中身も男らしい、身長170センチのイケメン女子だ。

普段はクールだが、月子のことになると母親(父親)のように心配してくる。また、月子のバイクの師匠でもあり、職業はフリーのイラストライター、月子は畑違いでわからないがそれなりに売れているらしかった。


しかも男らしい割には、同棲中の素敵な彼氏もちゃんといたりする。


「…クミちゃん、口にケチャップついてるよ」


月子は冷えたグラスを渡しながら、仁王立ちのクミをひとまず座らせ、きのうからの事を一通り話した。


「…でね、どこの誰かわからないし、顔も良くわかんないんだよね。私、バカかなぁ?…どう思う?やっぱ、やめた方がいいかなぁ…」


クミはしばらく腕を組んで考えていた。


「………」


長い沈黙。


(…やっぱ、怒るよね普通)


すると、


「なんてドラマチックな出会いなのぉ~。そんな事って普通無いよ、いいなぁ~、私が代わりに出会いたかったよ!面白そうじゃない?行くでしょ絶対に」


目が妄想でキラキラ光っている。


「あれっ、そんなの危ないからやめな、とか言うかと思った。…なんか面白がってない?やたら」


月子は横目でクミを見た。


クミは完全に浮かれながら、テーブルにあった月子のトーストを食べている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る