星の導き

第14話

僕は何かを追いかけるようにスピードを上げて真夜中の道路を走っていた。


彼女が降りたインターを出ると、多分、彼女が向かったであろう方向にバイクを飛ばした。


「私の家はインターから川を渡って、すぐなので」


確か、別れ際、彼女はそう言っていた。


自分でもバカげていると思ったが、もう一度会って、確かめたかった。何かを。


僕はその一心で彼女を探して橋を渡った。





どこかから1200ccの音が聞こえないか、耳をすませてみたが、辺りは静まりかえっていた。


(見つかるわけもないのに、なにやってるんだ僕は。彼女を追いかけてどうする・・・?これじゃあタダのストーカーじゃないか)


彼はフッと自分自身を笑ってから、頭を数回振ると、川沿いの道を都心方向に向かって走り去って行った。




(彼女のことは、忘れよう)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


実は、インターをおりると、川は2すじあり、当然、橋も2本あった。


彼は一つめの大きな橋を渡り、周辺を探していたが、月子はその先の2つ目の橋を渡り切ったところで信号待ちをしていた。


月子には遥か後ろの方でかすかにバイクの音がしたような気がした。


(まさか・・・ね)


月子は空耳だとは思いながらも、確認せずにはいられず、信号をUターンして一つ目の橋に戻り、橋の手前の交差点から辺りを見渡した。


すると、川沿いの側道を都心方向に走っていく一台のバイクのテールランプが小さく見えた。


(もしかしてあれは、あの人じゃないかな)


なぜかはわからなかったが、そう思えた。


月子が信号待ちをしている間にも、バイクは川の蛇行に添ってみるみる遠ざかり、やがて見えなくなった。

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