第10話
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月子は自分の軽率さが恥ずかしかった。
「はい。自分のバカさ加減に呆れてます。もっと警戒心持つべきでした・・・
ご迷惑をおかけしてしまって・・・本当にお恥ずかしいです。
あっ、あのっ、ごめんなさい、お時間取らせてしまって。
私は次のインターでおりて下道で帰れますから、もう大丈夫ですから」
月子は慌ててそう言った。
彼はヘルメットをかぶり、シールドを鼻の辺りまで下げて月子に近づいてきた。
そして、革のグローブをはめながら彼女に右手を差し出した。
月子は一瞬戸惑ったが、素直にその手をとると、
彼はいとも簡単にグイッと彼女を立ち上がらせた。
「もう、落ち着いたね」
二人が向かい合うと頭一つ分彼のほうが背が高かったが、彼の口元に笑みを浮かべた。
「はい。もう大丈夫です。本当にありがとうございました」
少しの沈黙。そして、何故か二人とも笑ってしまった。
(ぷふっ、ふふ)
月子の場合、緊張から解放された笑い。
(あははっ)
シールドから覗いた彼の口元から笑い声と白い歯が覗いている。
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僕は彼女の笑顔を見ていた。涙目で少しはにかみながら笑った顔を。
「あのさ、もし…嫌じゃなかったら、帰りも途中まで一緒に高速道路で戻らない?」
嬉しい申し出だったが、月子は返事をためらった。
またノロノロ運転に付き合わせてしまうのは申し訳ないし。
しかし、さっきの事があったので、一人で帰るのは心細かった。
「・・・ありがとうございます。ほんとに情けないですが、お言葉に甘えさせて頂きます。ごめんなさい」
そしてぺこりとお辞儀をした。
「あはは、ごめんなさいは必要ないよ。正直、ハプニング面白かったし・・・あ、ごめん」
そしてまた二人は笑った。
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