第8話

「チッ、なんだ、男連れかよ」


背後で男たちが舌打ちをするのが聞こえた。


ベンチからバイクまでの距離はほんの10mほどだったが、とても長く感じられ、男達全員の視線が二人に集中していた。



彼女は、震えていた。


僕は、男たちに悟られないように、彼女を支えていた。


「鍵、貸して、キミの」


僕は彼女の震える手から鍵を受け取ると、バイクにまたがった。


キーを回すと1200ccのノーマルインジェクションの上品なエンジン音が辺りに響く。


「後ろに乗って、僕の腰にしっかり掴まって!」


彼女は言われた通りに後ろに乗り、僕の腰にしがみついた。




僕は乱雑に停めてある集団のバイクの間を巧みにすり抜け、


トラックが留まっているさらに奥の、自分のバイク横まで移動させた。


トラックと暗がりで、もう集団からこちらは見えないはずだった。




あっという間の出来事だった。


月子がしがみついた手を離せずにいると、


「もう、降りても大丈夫だよ」


そう声をかけられてハッと我に返り、慌てて男の腰から手を離した。



彼女は緊張からか、バイクから降りようとしてフラリとよろけてしまった。


僕はとっさに彼女の体を受け止めると、彼女はまだ震えていた。



(よほど怖かったのだろう。無理もないよな)


エリア隅の地面に彼女を座らせると、僕自分も座り込み、足を投げ出した。


彼女ほどではないにしろ、内心、少し緊張した。



ほどなくして、遠くでバイク集団のエンジン音が一斉に轟き、あっという間にサービスエリアから出て行ってしまった。

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