クライシス

第6話

サービスエリアは広かったが、月子は駐車場の出し入れがまだ苦手だったので、中央に慎重にとめるとエンジンを切った。


(ほっ…無事に着けたーなんかドッと疲れたよ)


見渡したところ、他に駐車客はいないようだった。


ヘルメットを脱ぎ、すがすがしい空気を吸い込むと、脳に酸素が行き渡った。


くしゃくしゃになった肩甲骨の下まである長い髪が風になびく。


バイクに乗ると、こればっかりはどうしようもない、後ろで縛っても結局は風で髪は無残にこんがらがってしまう。


なので、彼女は髪が出ないようにヘルメットの中にしまっていた。女子あるあるである。


(いっそのこと、短く切ってしまおうかしら・・・)


何度そう思ったことか。



サービスエリアのカフェはすでに閉店していた。


月子はコーヒーは諦めて自販機で水を買うと、近くのベンチに座って一休みすることにした。


バイクに乗ると、やたらと喉が乾く。革ジャンの中も思った以上に汗をかいていた。


(そういえば、さっきの先導者さんはどうしたかしら、もう出発してしまったかな。本当にありがたかったな・・・)


いつか、ああいうスマートなライダーになりたいものだと、月子はしみじみ思った。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



僕はサービスエリアに到着すると、通常のバイク置き場からずっと離れた奥にバイクを留めた。


暗がりでヘルメットを脱ぎ、ポケットのタバコをを探したが、そういえば、数か月前から禁煙していることを忘れていた。


幸い禁煙はうまく行っているが習慣とは怖いものだ。


エリア内には定期便のトラックが数台いるだけで他に人影もない。


自動販売機と駐車場の灯りが所々を照らして、秋の虫が集まっているだけだった。


よく見ると、遠く中央の街頭の下にさっきのアメリカンが留まっている。


ライダーの姿は無かった。


柄にもなく、少しお節介なことをしてしまった気もしたが、なんとか山道は抜けた。


(この先は明るめの道が続くから、もう先導無しでも大丈夫だろうな・・・)


そんなことをぼんやりと考えながら、持っていた水をゴクリと飲んで、再びヘルメットを被った。




すると、爆音とともに十数台のバイクがサービスエリアに入って来た。。。

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