星の出逢い

第5話

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高速道路の山道は、他に車がいないと思ったよりも暗い。


月子は暗闇に吸い込まれるようなカーブに注意しながらかなり慎重に走っていた。


(く、暗いっ、右の下りカーブがまだ少し苦手だなぁ)


幸い後ろから煽ってくるような車両も無いため、のんびり走れるのは良かった。



出発してからそろそろ一時間は走っただろうか、山間から明るい月が覗いているのを見る余裕も出てきた。


(次のサービスエリアまであと数キロか、あと少しがんばろう。着いたらホットコーヒー飲みたいな・・・)


そんなご褒美的な事を考えながら夜道を走っていると、彼女のサイドミラーにチラチラと小さな光が見えた。


(後ろから、誰かが・・・近づいてくる)


その光はひらひらと軽快にカーブを下ってくる様子から、ベテランバイクのようだ。


(こんな時間に、お仲間がいるのね・・・)


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僕の前方の闇の中に、テールランプをやたら点滅させながら一台のバイクが走っているのが見える。


大型のアメリカンのようだ。ドライバーは全身黒づくめで男か女かわからない。


(・・・それにしても、やたら慎重な運転だな、夏の終わりの夜を飛ぶ虫みたいで、どこか頼りないかんじだなぁ)


僕もそれほど飛ばしてはいなかったが、直線にさしかかると、あっという間にアメリカンを追い抜いてしまった。


瞬間、特に挨拶するつもりは無かったが、アメリカンのライダーと目が合ったような気がした。


お互いヘルメットの黒いシールドで顔は見えなかったが。


(・・・・・・?何だろう、この違和感は、もしかして、初心者なのか?)


僕は、なぜか直観的にそう感じ、少し減速し、アメリカンの50mほど前方を走ることにした。


余計なお世話かもしれなかったが、夜の山道は前に一台いるだけでだいぶ走りやすくなるはずだ。


ライダーはビギナーかシルバーかよくわからなかったが、


(山道を抜けるまで、頑張ってついて来いよ)


と言う気持ちがなぜか湧いた。



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後ろから近づいてきた大型ネイキッドは、身軽なハンドルさばきで特に飛ばしているわけでもないのに、月子をあっという間に追い越していった。彼女と同じ全身真っ黒だ。



(あー、こ、こんばんはぁ・・・)


並んだとき、一瞬、手を上げて挨拶でもしてみようかとも思ったが、彼女にそんな余裕も技術もなかった。


(ああー、行っちゃった。仕方ないよね、こんなにノロノロペースじゃ置いてかれちゃうよね)


ネイキッドは決して危険な運転でもなく、基本どおりのコース取りで。滑らかに山の陰に消えていく。


彼女がマイペースな運転で山をひとつ越えると、さきほどのバイクがまた見えた。


さっきより、少し減速しているような気がする。


(うわ、ありがたい!どうかこのまま山道を抜けるまで、見失わないようについて行けますように)


祈りが通じたのか、思いがけない先導者の出現で、月子は無事にサービスエリアに到着できた。

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