ハヤブサ
第4話
僕は空いた時間ができると、車で夜の高速を走るのが好きだった。
1、2時間、あてもなく走って戻ることもあれば、気に入った湖や海の近くなど、何でもない場所に車をとめ、夜明けまで過ごすこともある。
別に、一人になりたい訳ではない。
ただ、何かを考えたり、逆に、何も考えずにいる時間が、僕には必要だった。
基本的にそういう時のドライブでは助手席には誰も乗せることはない。
このひとときだけは、無心で独りで過ごすと決めていた。
昔から仕事でヘトヘトに疲れていても、不思議と運転だけは苦にならなかった。
今夜も仕事が終わり、夜明けまで時間ができた。
ここのところ数日間、室内に閉じ籠りきりだったので、当たり前のようにガレージに降り、並んだキーに目を向ける。
ふと、愛車の横にある久しく乗っていないバイクに目に留まった。
数年前、形が気に入って購入したが、結局、あまり乗る機会がなく、飾りのようになってしまっているバイク。
(…久しぶりに今夜はこっちにしてみようかな…)
ありがたいことに、バイクの手入れは友人が定期的にしてくれているため、コンディションは万全だ。
エンジンを回してみると、軽快に嬉しそうな音を発して、黒と渋い黄色のグラデーションの車体がキラリと光った。
(久しぶりでごめんな。今夜は天気も良さそうだし、一緒にでかけよう・・・)
そんなふうに、バイクに語り掛けると、ガレージを後にした。
若いころは、散々バイクを乗り回していたので、運転は体にしみこんでいる。
すぐに自宅近くの首都高速道路に入り、中央道方面に入った向かった。
(気持ちいい。たまにはバイクもいいな・・・)
首筋から入る風が新鮮で、室内作業の鬱積を吹っ飛ばしてくれる。
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