第11話 彩雲の空で

◆◇◆


オアシスを探していると白邪が喋る。


「あれ!人じゃないか!?」


「えっ!?どこ?」


「ほら!あそこあそこ!」


指を指す。


「…あそこか!」


詳しくは見えないが確かに人がいる。


「成程、…テスター!自分で運転出来るか?」


『はい、出来ますよ。』


「よし、飛び降りるぞ!」


「ちょっと待つのじゃ!高くないか?これ!?」


「大丈夫、大丈夫、同時に飛び降りるぞ!」


「待つのじゃ!」


「3」


「死んじゃう!死んじゃう!」


「2」


「嫌!嫌!」


「1」


「あー!もう!どうなっても知らないから!」


「0!」


風防を開けて飛び降りる、と言っても白邪は開け方を知らないので、銃座の穴から出る。


「ふ~!!気持ちい~!!」


「怖い!!!怖い!!!」


白邪が叫ぶ


「白邪!!!こっちに来て!!!」


「わ…分かった!!!」


そう言うと白邪が抱きついてくる。


「…ヴォイネ飛行!!!」


「…早く地面に降ろしてくれ…」


涙声で言う。


「はいはい。」


◆◇◆


地上に降りて倒れている人に声をかける。

外見は黒髪のポニーテールだ。…驚く事に服は日本の着物だった。


(女性何だな、…なぜここに日本の着物が…?)


「大丈夫ですか~?」


「……」


「おーい!」


「………」


「…生きてるのかのう?」


息を確認してみる、…だが息をしている。


「息をしている、生きてるらしい。」


『マスター、オアシスを見つけました、それもかなりの大きさです。』


『了解、この人は気を失っているようだ、確か零式水偵は3人乗りだったよな?』


『ええ、では迎えに行きます。』


『了解。』


「…どうしようかな。」


「どうする…と言ってもなあ…やることないじゃろ」


「そうだけどさあ…暇じゃん?」


「…そうだなぁ」


(そうだ!)


「………砂のお城でも作るか!」


「おっ!いいじゃん!作ろ作ろ!」


「よーし!いっぱい作るぞ~!」


◆◇◆


お城を作っているとテスターが迎えに来た。


ガガガガガガ!


(胴体着陸…)


『マスター、何やってるんですか?』


「お城作ってる。」


『…そうですか、所で倒れた人は?』


「ああ、このお城に居るよ、今ウォーターボール水の球で冷やしてる。」


『分かりました、滑走路が無いのでヘリコプターで行きましょうか、マスター、何がいいですか?』


「UH-1Bがいいな。」


『はい、分かりました。トンスホ変身!』


そう言うとテスターがUH-1Bに変身した。


『さ、乗ってください、運転は任せてください!』


ドアが開く。


「んじゃ、ちょっと待っててね、白邪~!先乗ってて!」


「は~い」


女性が居る城まで歩く


「!」


ドアを開けると女性が起きていた。


質問をしてみる。


「どうも、えっと…あなたは?」


「…えっ!?…えっと…ここは?」


一瞬驚く。そりゃあそうだ、5歳児がこんな風に喋ったら誰でも驚く。

そして日本語だ、異世界語は分かるのだろうか。


「えっと、…元々どこに居ました?」


「日本です……って!?」


上にあるウォーターボール 水の球に気づいたようだ。

どうやら魔法を知らないらしい。


(日本から来たのか。)


「ここは異世界です、恐らく、漫画とかで見た事あるでしょう?」


「つまり、異世界に転移した…そういう事ですか?」


「そういう事です、続きはヘリに乗りながら話しましょう、ついてきてください。」


「ヘ…ヘリ?」


外に出ると白邪が叫ぶ。


「遅いぞ~!早く来い!」


「ああ!今行く!」


「ほ…本当にヘリだ…しかもUH-1B…!」


「ほう?UH-1Bを知っているとは、貴方もミリオタですね?」


「ほほう?と言う事は貴方もですか、貴方とはうまい酒が飲めそうですねぇ」


「新たな仲間が出来て嬉しいですよ。」


「それはこっちもですよ!」


「良いから乗るのじゃ!」


「「はーい」」


◆◇◆


「それでは同志、この世界の事を話してくれ。」


「その前に自己紹介を…俺はバルカン=アヴェンジャー=レン…転生した人だ。で、こっちは…」


「白邪じゃ!!よろしくじゃ!」


「ん?今なんて?」


「此奴…何と言った?」


「成程…異世界語が分からない…と…どうしよう。」


『マスター、そう言うと思って異世界語を翻訳するスキルを作って置きました、今ギフトしますね。』


「おっ!何だこの声は!?」


『テスターと言います。よろしくお願いします。』


「ああ!よろしく!…で?ギフトって何だ?」


「それはだな―――」


◆◇◆


とりあえずこの世界の事を一通り教えておいた。


「成程……魔法…面白そうだな。あっ、ギフトありがとうな、テスター。」


『どういたしまして』


「本題に戻ろう、名前は?」


「ああ、言って無いんだっけか…私の名前は彩雲零、大学生だ、専攻は社会学だ。」


「彩雲、いい苗字だな」


「だろ?自慢の苗字何だ!」


「だいがくせい?せんこう?しゃかいがく?」


「白邪には難しい話だ、寝てろ。」


「…分かった。」


『寝る暇は無いですよ、あと5分ぐらいで着きます。』


「「はーい」」


「喜べ白邪!あと5分で水遊び出来るぞ!」


「ホント!?やった!」


(ずっと砂漠で暑かっただろうしな)


「白邪は可愛いね~」


零が白邪を撫でる。


「えへへ~」


「…まるで親子だな。」


「あれ?何で泣いてるの?」


「…えっ!?」


目を触ってみる、確かに泣いている。


「…何で泣いてるんだろ、俺。」


「…撫でてやろうか?」


普段なら断る所だが、何故か、こんな答えをしてしまった。


「…お願いします。」


空には彩雲が見えた。

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