第94話

どうやら、俺が命をかけ、

記憶を代償に守った女は、


あんなクソ野郎じゃなく、







最高の女だったらしい。















章弘がニヤニヤと笑いながら、俺のの肩に腕を絡ませた。



それを見て、長谷川が笑う。







ふふふ、と笑うだけの彼女に少しイラつき、

嫌がらせに抱きしめてやった。




すると、章弘がヒューと口笛を吹き、

長谷川が赤くなる。













「あぁ、長谷川」



「ん?」



「名前は?」



「……ほ、蛍」








あぁ。ぴったりな名前だ。



そう、思った。













儚い光のくせに、自分はここで生きているのだと強く輝く。


あの、温かい緑の光。


見ている人がつい微笑んでしまうような、そんな温かい光。












彼女の笑顔のような。



彼女の、この綺麗な涙のような。

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