第95話
やっぱり、思い出すことはできない。
家族も、友人も、章弘も、蛍も。
どうやら、俺の家族はもう死んでいるらしい。
今いる家族は、俺が5歳の時に引き取ってくれた従兄弟の家らしいのだ。
元から俺は家に帰るのを嫌がっていたらしい。
居場所なんて、俺には最初からどこにもなかった。
でも、俺は見つけた。
やっと、見つけることができた。
たとえ記憶に残っていなくても、
頭も心も覚えていなかったとしても、
自分が感じていたぬくもりはわかるのだ。
触れた瞬間にわかる。
ずっと感じていた物足りなさの正体は、
このぬくもりであったと言うことを。
だから…
「ただいま」
fin.
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