第93話

「……なぁ」



「うん?」



「俺の彼女って、和香奈じゃなくてあんただったんじゃねぇの?」



「え…」



「れっ、レイちゃん⁉︎

俺いるの忘れてる⁉︎というか俺出てくね⁉︎」



「忘れてねぇよ。ここにいれば?」



「まっ!男前!」








長谷川が視線を落とした。


だから、その顔を覗き込んだ。





すると、わかりやすく長谷川の顔が赤くなる。









「………何で言わなかったんだよ」



「だっ、て…

記憶ないのに、突然彼女ですって言ったら、怖いでしょう?」



「……………」



「それ、に、和香奈ちゃんが、

…いた、から…」



「……………」











ーーーーだからね、思い出さなくていいよ。

黎夜が苦しいなら、つらいなら、そんな思いしてまで思い出さなくていいの。


忘れちゃったなら、新しい関係作って、なくなった思い出よりいい思い出積み重ねたらいいかなって、思うんだ


だからね、だから…


記憶がなくても、黎夜の目に私が映ってたら、

たとえ他人同然で見られてても、それで良いの











「……お、前…ほんと、言えよ……っ」

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