第92話

「ほーちゃーん。

これ、自販機で買ってき…たよん⁉︎」




その声に振り向けば、意味のわからない乙女ボイスを発した章弘がいた。


元から泣いていた長谷川と、長谷川の頰に手を当てて泣く俺。





章弘からすれば、何じゃこれ、という状況だろう。








「どした⁉︎

えっ、なになに⁉︎え⁉︎ちょっ、えぇ⁉︎」



「あき、大丈夫?」



「いっ、いやいやっ!ほーちゃん!

何でレイちゃん泣いてんの⁉︎」



「わ、わかんない…」








俺は視線を長谷川に戻した。



驚きで、中森の涙は止まっていた。






それでも、親指でその目尻を何度も撫でる。









「えっ、…え?浜崎君?」



「レイちゃん?ど、どした?」



「………………」











正直、自分が泣いている理由がわからない。


でもなぜか、頭の中で言葉が浮かんでくるのだ。

















ーーーー私はね、私を覚えていてくれるよりも、私がここにいるってことを認めてくれることの方が、ずっとずっと、幸せだよ?



ーーーーは?…何で今にも死にそうな会話してんだよ



ーーーーね、聞いて?私ね、私…

いつだって黎夜は私を見てくれるって、思う、の



ーーーーそりゃそうだろ



ーーーーどこにいても、忘れちゃっても、絶対黎夜は私を1人の人間として見てくれるでしょう?



ーーーーだから、当たり前だろ。記憶になくたってお前のところに足向く自信あるわ



ーーーーえへへっ






だからね、…

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