第91話

それでも長谷川の涙は止まらず、もう一度親指でその目尻を拭った。






そして、

俺のその手に、長谷川がその頰をすり寄せた。












嬉しそうに。


















「…………っ…」



「浜崎君?」












温かい頰。


嬉しそうに擦り寄る、その仕草。





"いつも"、さびしくて泣いていた、…















ーーーーねぇ、もし私のこと忘れちゃったとしても、思い出さなくていいよ



ーーーーは?何でだよ。…ってか、そんなシチュエーションは本の中だけだろ



ーーーーふふふっ。そうだねぇ。

でも、もし本当にそんなことになっちゃったとした時にさ。

……無理に思い出さなくていいよ



ーーーー何で?



ーーーー記憶がなくなっても、黎夜は黎夜だから



ーーーー何それ。本の読みすぎじゃない?



ーーーーえへへっ。そうかも。でもね、私、覚えてもらってるよりも…















ポロリと、自分の頰を1つ筋、涙が流れた。



それを見て、長谷川が目を見開く。

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